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海外ゲーム『ゴースト・オブ・ツシマ』はなぜ、“史実と違っても”受け入れられたのか?:エンタメ×ビジネスを科学する(4/5 ページ)
歴史をテーマとしたゲームに付いて回るのが「史実との整合性」であり、しばしば議論の的となっている。
ゴースト・オブ・ツシマが受け入れられた要因
ゴーストオブツシマが日本市場で違和感なく受け入れられ、成功を収めた最大の理由は、このような「文化・思想の押し付け」が極めて少なかった点にあると考えられる。
純粋にエンターテインメントとしての面白さを追求し、その世界観を彩る要素として日本の文化や風景を効果的に活用したのである。
開発元であるサッカーパンチプロダクションズの創業者やプロデューサーは複数のインタビューで、史実の再現よりもエンターテインメントを優先した上で「日本人が違和感を持たない日本の表現」を重視したと語っている。特に、黒澤明監督の作品で描かれた「日本の時代劇」の本質的な魅力を再現することを試みたとしている。
開発陣の黒澤作品へのリスペクトはすさまじく、同作品のカメラワークや演出方法を意識してゲームに取り入れているほか、モノクロ映画のような映像表現でゲームをプレーできる「Kurosawa Mode」を実装しているほどだ。
サッカーパンチプロダクションズがこの方針をブレずに貫いたことが、「日本をテーマとした歴史ゲーム」が日本市場で受け入れられた最たる理由といえるだろう。
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