ゲームの海外展開で「文化や思想」どこまで配慮すべき? 法的にOKでも……:エンタメ×ビジネスを科学する(1/2 ページ)
時にはファンから「余計なお世話」と迷惑がられてしまう、ゲームにおけるローカライズ。ゲーム開発会社はどう向き合うべきか。後編。
時にはファンから「余計なお世話」と迷惑がられてしまう、ゲームにおけるローカライズ。前編では言語、文化、法律、アクセシビリティなど、多岐にわたる配慮が必要な現代のビジネス環境について整理した。後編では明確な判断基準が存在しない領域についても解説する。
ローカライズにおける文化対応において、複数の文化や思想とのバランスは非常に困難なテーマである。ゲームメーカーは自国の文化や習慣を反映したオリジナルの表現を大切にしつつ、他国地域の文化・思想との調整を行うことが求められている。
明確な基準が存在しないゆえの難しさ
困難となる背景は法律などと異なり明確な基準が存在せず、同じ国地域の中でも価値観が異なること、またその細分化が年々進んでいる点にある。
例えば職業や役回り、それらと人種や性別が組み合わさった場合のイメージの違いである。同じ国・地域の中でも、特定の集団において特定の組み合わせはネガティブなイメージを持つため避けるべき、といったことが無数に存在し得る。
また容姿や配役についても、賛成/反対の意見が割れ、SNS上でファン同士が議論を交わしているのを見たことのある人も少なくないだろう。上にあげた職業や人種・性別・容姿・障害や傷病、またこれらに関係した言葉やグラフィック表現などは、多数の考慮対象が存在する。いずれも法律などで定められた明確な基準がなく、定量的なセーフ/アウトのラインを引くことができない。故に対応が困難なのが現状だ。
論争を呼びがちな例としてはキャラクターの衣装である。中国のように明確に過度な露出を禁じている国もあるが、法律で明確に禁じていない国であっても、露出やボディーラインの表現などにクレームが集まってしまうケースもある。
中国における制約の例として、中国発のアクションロールプレイングゲーム『原神』がある。当局から具体的な指示があったかは定かではないが、中国国内においてのみ、露出度の高い衣装から露出を抑えた新衣装へ強制的に切り替えられ、旧衣装は選択不可とされた(中国以外では露出が高めの旧衣装と新衣装どちらも選択可能だ)。
この処置が行われた際、多くの中国プレイヤーから他国を羨む声が上がった。開発会社が自国から制約を受けるという珍しい例であるが、文化的・法的対応の難しさを示す一例といえるだろう。
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