2人乗車はなぜ難しい? 超小型モビリティ「Lean3」が日本では1人乗りの残念な事情:高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)
2024年のジャパンモビリティショー ビズウィークで注目されていたのは「Lean3」という小型モビリティ。2人乗車仕様の販売を実現するには、まだ手探りの状況だ。官民挙げて超小型モビリティを普及させ、ビジネスを広げていってほしい。
高齢ドライバーの移動手段に
超小型モビリティに話を戻すと、これは高齢者の移動手段にも最適なモビリティと言える。動力性能は控えめで、車重が軽いので、万が一の衝突時にも衝撃は少なく、EVでシンプルな装備にとどめれば操作も簡単で覚えやすい。
車幅が狭いので、狭い道でも曲がり角の通過やすれ違いも苦にならない。また衝突を回避しやすく、仮に逆走しても対向車は避けやすいはずだ。
前述のFOMM ONEは、アクセル操作はハンドルにあるレバーで行うようになっていた。つまり、足で踏むのはブレーキだけで、踏み間違いの危険は少ない。超小型モビリティは操作系も刷新できる、新しい乗り物を生み出す領域なのである。
そういった意味では、Lean3には、2023年のジャパンモビリティショーでトヨタが発表した、ハンドルだけでアクセルとブレーキも操作できる「ネオステア」のような操作系を取り入れてほしいとも思う。
トヨタが2023年に展示したネオステア。アクティブステアリングにレバー式のスロットルとブレーキを組み合わせたもので、画像のように車椅子でも運転できる。ブレーキはペダルでもいいが、スロットルは指で操作した方が安全性は高い
そして高齢者には、サポカー限定免許(これはクルマの外観では判断できないし、機能としても不十分)ではなく、超小型モビリティ免許への移行を促せばいいのではないだろうか。
Lean3は、台湾で100万円以下の価格(バッテリーは別)を実現する予定だという。まずは台湾で、そして日本でも原付ミニカーとして販売し、マイクロEVの市民権を獲得してほしいと思うのは筆者だけではないはずだ。
そうなれば、マイクロEVを開発、生産できる企業の需要が高まってくる。日本のモノづくりの力を再び発揮して、海外にもビジネス展開できるようになってほしいものだ。
10年余りの時を経て、再び高まってきたマイクロEVの機運に、期待してしまう。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
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