連載
設備投資に1486億円 「富士山登山鉄道」構想に推進・反対派が真っ向対立 問題点はここだ(2/5 ページ)
富士山北麓の山梨県富士吉田市と、富士山五合目を結ぶ壮大な登山鉄道を建設する構想がある。この構想が今、推進・反対派の主張が真っ向からぶつかる事態となっている。
設備投資額の合計は1486億円
次に、収支分析などについて見ていこう。設備投資額の合計は1486億円で、事業期間を40年とした場合の経済波及効果は1.56兆円、雇用効果は延べ12万人になると試算している。
LRTは複線軌道で整備し、6分間隔で運転すると仮定した場合、1日10時間、年間280日運行すると、年間の輸送人数は336万人になるとしている。この年間利用者数300万人、設備投資額1486億円、営業費用(年額)約35億円を収支分析の前提としているが、これはかなり無理がある数値と言わざるを得ない。
冬季の富士スバルラインは除雪車による除雪後も、路面凍結のために通行止めとなるケースが多く、五合目までの全線が営業できる日数は、年間223日程度(2012〜17年度における平均値)である。ゴムタイヤの自動車に比べて粘着力の低い鉄車輪を用いる鉄道であれば、さらに営業日数は減らさざるを得ず、280日間フルで営業するのは困難だ。また、運賃1万円のLRTを6分間隔で運転しても、2両編成(定員120人)の車両の乗車率が100%になることはまずあり得ないだろう。
「中間報告」では、利用者数・設備投資・営業費用の3要素いずれの数値も37%悪化した場合に合計収支が0となる、つまりこれを損益分岐点としているが、少なくとも利用者数に関しては、もっと低く見積もるのが妥当と思われる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「オーバーツーリズムは“悪化”している」 星野リゾート社長が感じた危機感
星野リゾート、北米に初進出 「100年前にピーク過ぎた場所」になぜ開業? 代表明かす
星野リゾートの星野佳路社長は10月17日の報道機関向け発表会で、米国に温泉旅館を開業することを発表した。
ナイキ「オワコン化」の足音 株価急落、新興シューズメーカーが影
ナイキの不調には複数の要因が絡んでいるようだ。
インバウンドに沸く渋谷ドンキ 「深夜帯」は一人勝ち状態に?
多額の“外貨”を稼ぎ出す、渋谷ドンキの戦術はいかに。運営会社に取材した。
“インバウン丼”と呼ばないで――1杯1万円超の海鮮丼が話題の豊洲「千客万来」、運営企業が漏らした本音
メディアによる切り取った報道に、現地は困惑しているようだ。