設備投資に1486億円 「富士山登山鉄道」構想に推進・反対派が真っ向対立 問題点はここだ(3/5 ページ)
富士山北麓の山梨県富士吉田市と、富士山五合目を結ぶ壮大な登山鉄道を建設する構想がある。この構想が今、推進・反対派の主張が真っ向からぶつかる事態となっている。
技術的な不安要素
では、技術面はどうか。気になるのは、富士スバルラインは最大88パーミル(1キロ走行するごとに88メートル上がる)の急勾配や急カーブが多く、しかも勾配とカーブが競合しているところが多い。「中間報告」によると、脱線リスク軽減のため、噴射装置による増粘着剤の散布や、レールへの脱線防止ガードの設置により対応するという。
80パーミル前後という数値は箱根登山鉄道の最急勾配と同等であり、実績がないわけではないが、富士山五合目の標高は2300メートルであり、平地では考えられないような強風が吹き、急な天候の変化も多い。登山鉄道を実現するならば、今後、相当な検証の積み重ねが必要となるだろう。
技術面でもう1つ不安要素となりそうなのが、集電方式である。「中間報告」は第三軌条集電方式(架線レスシステム)が「実績があり優位性がある」としており、それ自体は景観保全の見地からも妥当であると考えられる。問題は、途中駅周辺や人が線路を横切る区間、急曲線区間では危険性を伴うため第三軌条を用いることができず、一部でバッテリー走行を視野に入れる必要があるという点だ。
バッテリーはどうしても、それなりの重量になる。最近は総重量を過度に増やすことなく、容易に搭載可能な路面電車を想定したバッテリーも開発されているとはいえ、車両重量の増加は急勾配を上り下りする鉄道にとってマイナス要素にしかならない。
ここで思い出されるのが、100パーミルの急勾配に対応するために強力なモーターを搭載したことから車体重量が増加し、構造物への負荷による危険性の増大などから、開業後1年半で休業に追い込まれた横浜ドリームランドモノレールの事例だ。今回のLRTも大型モーターの搭載が必要となり、車両の制動性能(ブレーキ)や路盤・路床および橋梁への影響なども考慮されなければならない。
こうした技術面に加え、雪崩、落石、火山噴火時の避難計画や自然公園法などの諸法令・規制への対応などクリアすべき課題は多く、実現するにはかなりの時間が必要となるであろう。県は最短でも工事着工まで8年かかるとしている。
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