自治体を苦しめてきた「オープンデータ公開」 負担軽減へ生成AIが秘める可能性とは?(3/4 ページ)
今回は「自治体のオープンデータへの取り組みと生成AIの関係」について考える。長年、自治体職員の負担となってきたオープンデータの運用。生成AIの登場が現状を打開するきっかけとなる可能性があるという。
オープンデータ運用が行政事務を阻む一因に
オープンデータと混同されやすい制度として「情報公開制度」というものがあります。
市民団体が行政機関などに対して、公文書などの開示請求を行った、というようなニュースを見聞きした方もいらっしゃるかもしれません。
実際、私自身も博士論文執筆のため、どうしても確認したいことがあり、この制度を使ったことがあります。こちらもChatGPT searchを使ってみたところ、総務省のWebページを情報源として次のような回答が返ってきました。
【ChatGPT searchの回答】
情報公開制度は、行政機関が保有する情報を国民に対して積極的に開示することを目的としています。これにより、政府の諸活動に関する説明責任(アカウンタビリティ)を全うし、公正で民主的な行政の推進を図ります。具体的には、国民が行政文書の開示を請求する権利を明確化し、行政機関がその保有する情報を一層公開することで、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的としています。(情報源:総務省)
行政機関が自ら保有するものを開示するという点では、オープンデータと同じといえます。違いがあるとすれば「データ」と「情報」という部分です。
だったら、情報公開制度の枠組みの中でオープンデータも一緒にやればいいじゃないの? という声が聞こえてきそうですが、その前に「データ」と「情報」の違いを確認しておきましょう。
データとは「客観的な事実を示す数値や文字などで表現された資料」のことであり、情報とは「目的に寄与するデータや、データを元に編集された資料」のことを指します。つまり、データが編集され、意味を持つことによって情報となるのです。
自治体が保有する情報は、行政事務のために編集されたものであり、その内容や形式は市民に向けたものではありません。そもそも情報公開制度は行政事務の透明性を説明するためのものであり、公開情報の再利用は制度の範囲外にあります。
また、情報として編集される前のデータが、常に再利用可能な形式で存在しているわけではありません。職員の能力や経験に基づいて非定型のデータ(Word文書やPowerPointスライド)を編集している業務もあり、それらは現時点でオープンデータに適していない場合もあります。さらに、データ自体が存在せず、情報だけが手元にあることも多々あります。
ところが官民データ活用推進基本法では、自治体がどれだけデータを公開するかという議論に偏っています。データとして整備されていないため、職員がわざわざ手作業で公開用のデータを作成していた、というような話を聞くと、このような運用を職員に強いるオープンデータは、行政事務の阻害要因にしか見えません。
他の自治体とデータの公開状況を競うことをせず、地道な業務改革に取り組み、通常の行政事務の副産物として公開可能なデータが生み出される仕組みを構築すべきなのです。
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