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松井証券×JCBが挑むクレカ積立 赤字は避けられないのに、なぜ勝負するのか「ポイント経済圏」定点観測(5/5 ページ)

投資信託のクレカ積立市場に、ネット証券最後発の松井証券と、大手カード会社で唯一参入していなかったJCBが参入する。「採算がとれない」といわれている市場に、なぜ参入したのか。背景を取材すると……。

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カード業界最後の大手参入、JCBが選んだ戦略

 JCBにとって証券会社との提携は新たな挑戦となる。大手カード会社の多くが証券会社と組んでクレカ積立市場に参入する中、同社は慎重な姿勢を崩さなかった。参入を決めた背景について「資産形成ニーズが無視できない流れになってきた」とJCBの山氏は説明する。

 松井証券はすでにジャックスと提携カードを発行しているが、今回はJCBとの組み合わせを選んだ。「カード業界のパイオニアであり、ブランド力、技術力、サービスの質も高い」と増田氏はJCBを評する。同社が実施した顧客調査では、投資信託の積立投資を行っている顧客の2〜3割がすでにJCBカードを保有しているという。後発ながら、JCBブランドの求心力を武器に市場参入を図る形だ。


今回のクレカ積立サービスを推進した、JCBイシュイング本部販売促進部長の山哲夫氏(左)と松井証券マーケティング部長の増田雄亮氏(右)

 当面はJCBオリジナルシリーズでの展開にとどめるものの、成果次第で対象カードの拡大も検討する。富裕層の取り込みを軸に、カードの利用単価の上昇とメインカード化を図る。調査会社J.D.パワージャパンの調査でも、ポイント経済圏にとって投信残高ポイント付与などの重要性が増していることが示されている。証券ビジネスと連携することがカードにとっても重要な時代になってきている。

 後発の2社の参入により、クレカ積立市場は新たな局面を迎える。新NISAを追い風に各社が低コストインデックスファンドでの顧客基盤拡大を急ぐ中、松井証券とJCBはアクティブ投信による富裕層の開拓という異色の戦略で挑む。投資残高に応じたポイント還元という独自の仕組みと、JCBブランドの組み合わせで、市場の分断線が鮮明になる。

 インデックス投資の大衆化という流れの一方で、投資ニーズの二極化も進む。JCBもクレカ積み立てに本腰を入れ始めたことで、カード会社を巻き込んだ資産運用ビジネスの変革が、新たな段階に入る。

筆者プロフィール:斎藤健二

金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。


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