次に売れるクルマは何か? どん底の日産が復活するための道筋:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
EVの販売が伸び悩む中、日本国内ではミニバンやSUVが人気だ。特に、使い勝手の良さによって、シエンタなどのライトミニバンの人気が根強い。不調の日産は販売車種の再構築が必要だろう。判断力とスピードが求められる。
日産の何が問題なのか。今後は?
日産の何がいけなかったのかというと、技術力や開発リソースを一部の車種に絞り込みすぎたことも大きな要因として挙げられる。EVや独自の電動パワートレイン「e-POWER」を幅広い車種に展開せず、マーチやエルグランドなどをほったらかしにしてしまったツケが回ってきている。
キューブキュービックなどのライトミニバン的なモデルを廃止して、セレナに集中してしまったのも問題だ。軽自動車EVのサクラとノート、セレナしか売るクルマがなく、同じくe-POWERのエクストレイルとキックスがSUVとして何とか台数を稼いでいる。
トヨタ、ホンダに対抗できないので車種を絞り込んだのであれば、販売規模も絞り込まなくてはならない。売れ筋モデルが少ないのに工場の生産能力や販売目標を以前のまま維持しようとしてきたことが、収益の悪化を招いた原因の一つだろう。
もっとも、日本の自動車メーカーのほとんどは、国内販売で収益を稼いでいない状況だ。北米や新興国、欧州市場でほとんどの利益を上げている。日産の業績が悪化したのも北米を中心に稼いできた市場で販売不振に陥ったからだが、これも市場のニーズを読み切れていないからに過ぎない。
売れないクルマを多数ラインアップするのは損失を増やすだけだ。しかし日産は、企業規模に比してラインアップが乏しく、特定ユーザーにしか響かないクルマをつくり続けてきた。ここから挽回するには、相当なリストラが必要だ。人員整理ではなく、販売車種の再構築こそ、日産が再生するために必要なことだろう。
自動車産業は100年に1度の変革を迎えているといわれるが、それだけでなく、変革のスピードも段違いに速い。各メーカーが全固体電池や自動運転など、競争分野での開発ぶりをアピールしているのも、先進性を印象付けたいからだ。日産に足りないのは判断力とスピード感ではないだろうか。
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