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吉野家はなぜ、「カレー」と「から揚げ」の専門店を始めるのか?マーケティング戦略を考察する(4/4 ページ)

牛丼一筋のイメージが強い吉野家HDは、なぜ新業態に進出したのか。

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リスクを分散し、市場の変化に対する柔軟な対応が可能に

 複数の業態を展開することで、リスク分散も可能だ。

 外食産業は、消費者の嗜好の変化や競合他社の動向、経済状況など、さまざまな要因で市場環境が変化する。

 新業態を行うことで特定の事業への依存から脱却し、各業態が相互に補完し合うことで、企業全体の安定性を高められる。

 さらに、吉野家HDの新業態のから揚げやカレーは持ち帰りやすく、テークアウト需要の高まりにも対応している。


カレー専門店「もう〜とりこ 浅草中央店」店内

 コロナ禍を経て定着した非接触型の消費行動に適応し、新たな顧客層の獲得や販売チャネルの拡大が期待できるのだ。

ブランドの多面性と競争優位性の確保

 新業態への挑戦は、吉野家というブランドの多面性をアピールすることにもつながる。従来の「吉野家=牛丼」という固定観念を打破し、多彩なメニューを提供する総合外食企業としてのポジショニングを確立しようとしている。

 また、多業態の展開により、競合他社との差別化を図り、市場での競争優位性を高めている。他社が模倣しづらい独自のビジネスモデルを構築し、市場シェアの拡大とブランド力の強化を目指している。

「持続的成長」を目指した挑戦

 吉野家HDがカレーやから揚げ専門店に乗り出す背景には、さまざまな戦略的意図がある。強いブランドを持ちながらも現状に満足せず、新たな挑戦を続ける吉野家HDの姿勢は、他の企業にとっても大いに参考になるだろう。

 市場環境が激しく変化する中で、いかにして持続的な成長と企業価値の向上を実現するか。その答えの一つが、吉野家HDの戦略に表れている。

金森努(かなもり・つとむ)

有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師

金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。

2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。大学でマーケティングを学び、コールセンターに入社。数万件の「本当の顧客の生の声」に触れ、「この人はナゼこんなコトを聞いてくるんだろう」と消費者行動に興味を覚え、深くマーケティングに踏み込む。(日本消費者行動研究学会学術会員)。

コンサルティング会社・広告会社(電通ワンダーマン)を経て、2005年に独立。30年以上、マーケティングの“現場”で活動している「マーケティング職人」。マーケティングコンサルタントとして、B to B・Cを問わず、IT・通信、自動車・電機・食品・家庭用品メーカー、金融会社、生損保、自動車販売、EC等、幅広い業種に対応し、新規事業・新商品開発・販売計画・販売のテコ入れ案・コミュニケーションプランの策定等、幅広くマーケティング業務の支援を行っている。講師としても業種を問わず、年間100コマ以上の企業研修に登壇。コンサルティング経験を元に企業課題に合わせた研修のオリジナルのコンテンツやカリキュラムを提供。研修によってマーケティングを「知っている」だけではなく、「業務に生かせるようになること」にこだわっている。執筆は、「初めてでもマーケティングが楽しく体系的に学べる本」をテーマに10数冊刊行。「3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)など。


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