日産とホンダ協議で「再編の波」 今後を展望する上での“ポイント”は?
日産自動車とホンダの経営統合を視野に入れた協議は、中国メーカーの台頭や車両の電動化によって自動車産業が変革する中で浮上した。今後を展望する上での“ポイント”を開設する。
日産自動車とホンダの経営統合を視野に入れた協議は、中国メーカーの台頭や車両の電動化によって自動車産業が変革する中で浮上した。内燃機関で世界を席巻した日本の自動車業界も影響を免れることはできず、基幹産業として競争力を維持するため、8社ある国内の乗用車メーカーは今後大きく2陣営に集約される可能性がある。
12月18日、日産自動車とホンダの経営統合を視野に入れた協議は、中国メーカーの台頭や車両の電動化によって自動車産業が変革する中で浮上した。写真はジュネーブのモーターショーで、カバーがかけられた車が並ぶ日産とホンダの展示スペース。2016年撮影(2024年 ロイター/Denis Balibouse)
統合で世界3位の売上規模 ポイントとなるのは?
日産とホンダが業務提携に向けた話し合いを始めたのは2024年3月。8月1日に覚書を結び、電気自動車(EV)向けの電池や駆動装置、ソフトウェアなどで「提携」することを発表したが、関係者の1人によると、さらに踏み込んだ協力関係をその前から考えていたという。
事情を知る別の関係者は「ホンダも日産も、市場の変化に警戒感を互いに持っていて、協議を進めて早くまとめたいという意向があった」と説明する。「この先、自社だけで、単独で行けるとは思っていない」と語る。
前出と別の関係者3人によると、両社は持ち株会社を設立してそれぞれ傘下に入り、技術などを持ち寄って協力を深めることを検討している。同関係者らの1人によると、経営統合も視野にある。
自動車を経済成長のエンジンとしてきた日本は、1967年に国内の生産台数が西ドイツを抜いて世界2位になった。もう一つの柱だった電機産業が1990年代ごろから凋落(ちょうらく)しても、自動車は日本の基幹産業であり続け、燃費性能などを武器に北米、中国、東南アジア市場などで高いシェアを握った。
潮目が変わり始めたのは2010年代後半。米テスラが急成長し、EVが徐々に普及。電池やモーター、ソフトウェアなどが自動車の性能を決めるようになり、内燃機関車で強みを発揮してきた日本メーカーには逆風となった。特に世界最大の自動車市場となった中国では、現地勢との競争が激しくなる中で日本を含めた世界の大手メーカーは戦略の見直しが必要になった。
自動車政策に詳しい日本の政府関係者は「電動化や知能化を含めて自動車産業が大きく変わっている上、中国勢も台頭してきており、国内に自動車メーカーが8社もあるのは多すぎて日本の産業競争力上、難しい」と話す。
日本勢が競争力を高める必要性に迫られる中で、すでにトヨタ自動車を中心とした陣営化は進んでいる。同社はダイハツ工業を子会社とし、SUBARU、スズキ、マツダとも資本関係がある。
さらにもう一方の陣営として「ホンダと日産を一緒にしたいという考えはずっとあった」と前出の政府関係者は話す。
「自動車国内市場が縮小する中で、ホンダと日産が統合することで世界的な競争力をさらに高めていってほしい」と経済産業省出身で、自民党の鈴木英敬衆議院議員は語る。ホンダが運営する鈴鹿製作所や鈴鹿サーキットがある三重県の知事でもあった鈴木氏は、「自動車産業は日本経済の雇用にとっても重要だ」と話す。
ホンダと日産、さらに今回合流する可能性がある三菱自動車工業の年間販売台数は合計約850万台(2023年度)と、世界首位のトヨタ自動車グループ、2位の独フォルクスワーゲングループに次ぐ規模となる。しかし、構想が実現して規模を拡大しても、スピード感が問われる。
中国でも北米でも苦戦する日産は生産能力を20%削減し、年間販売350万台レベルで配当や成長投資を継続可能な収益構造にすることを目指しているが、達成時期は2026年度だ。ホンダはハイブリッド車の販売が好調な北米市場で稼げているものの、現地メーカーとの競争に直面する中国市場は販売が低迷している。
「中国勢はスピードが全然違う」と伊藤忠総研の深尾三四郎エグゼクティブ・フェローは指摘する。「今までの1000万台クラブなど、規模の経済性で利益を出してそれを投資して稼いでいくという5年くらいかかるような再編スピード感でやるという時代ではもうない」と語る。

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