コンサル業務を年間「1万560時間」削減 生成AI活用が変えた組織とは?:1人当たりの売上高が前年比140%
リンクアンドモチベーションは、生成AIの活用を中心としたDX推進を加速させる。コンサルティング専門部隊における従業員1人当たりの売上高が、前年比約140%となったことを発表した。
経営コンサルティング企業のリンクアンドモチベーション(東京都中央区)は、生成AIの活用を中心としたDX推進を加速させる。12月24日には、コンサルティング専門部隊における従業員1人当たりの売上高が、前年比約140%となったことを発表した。AIと協働することによって業務の効率化と価値創出を促進する狙いだ。
「生成AI推進チーム」を立ち上げ 年間1万560時間の業務削減
リンクアンドモチベーショングループでは「組織開発Division」「個人開発Division」「マッチングDivision」「ベンチャー・インキュベーション」事業を手掛けている。中でも、人的資本経営の追い風を捉えて「組織開発Division」のコンサル・クラウド事業に注力しているという。AIを活用することによって業務効率を向上させ、従業員の思考時間や価値創出業務への集中を可能にした。その結果、中長期的な企業成長につながる土台を構築したという。
生成AI活用人材は増加していて、業務でAIを1日1回以上活用している人材の割合は96%となった。その結果、従業員1人当たり月40時間、合計で年間1万560時間の業務削減につながったという。
日本企業ではDX推進の流れが加速している。だが短期的なコスト削減に重きが置かれ、中長期的な成果創出や、その実現に向けた具体的なプロセス改善に課題があるのが現状だ。
PwC Japanグループの調査によると、生成AIの活用効果について「期待を大きく上回っている」と回答した人は9%にとどまっていて、米国と比較すると大きな乖離が見られた。そこで同社は、短期的な効率化にとどまらず、中長期的な企業価値向上を目指してプロジェクトを推進している。
具体的には、生成AI推進チームを立ち上げた。コンサルティング専門部隊と協力してAIツールの開発、活用、変革事例創出、ナレッジの蓄積というサイクルを構築している。ツール制作担当と、業務全体を見極める担当を分けて配置することによって、事業への本質的なインパクト創出も目指した。
AIツールを開発する際には、現場での活用を促進できる仕組みづくりに注力している。すでに実施されているコンサルティングプロセスに応じてAIツールを組み込み、誰でも簡単に実行できる仕組みを構築した。生成AIツールの活用時間もモニタリングし、組織全体の生産性向上を目指している。
業務特性に合わせた最適なツールを選定するために、多様なAI技術も活用した。ChatGPTやPerplexity、n8n、Gammaなどを利用。文章生成や情報収集、AIツール開発、資料作成などに役立てている。
社員からは「資料作成や文章チェックなどの業務が効率化され、提案内容を練るための余裕ができた」「業界分析やリサーチ業務が効率化され、顧客との対話準備により多くの時間を注げるようになったことで、顧客満足度向上にもつながっている」といった声が寄せられた。
同社は2025年以降、この取り組みをコンサル・クラウド事業全体、さらにグループ全体に拡大する予定だ。組織人事における知見と生成AIを組み合わせた新たな商品サービスの開発や、自社の取り組みを顧客に展開するなど、さらなる事業インパクトの創出を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
年間「2万9000時間」を創出 キリン、業務特化型の生成AIプロジェクト始動
キリンホールディングスは、業務特化型の生成AIを活用したプロジェクト「KIRIN BuddyAI Project」を開始した。国内の従業員約1万5000人が対象。
孫正義「A2Aの世界が始まる」 数年後のAIは“人が寝ている間に”何をする?
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、個人専用のAIが予定の管理や買い物などを代行する「パーソナルエージェント(PA)時代」が数年以内に到来するとの見方を明らかにした。
“孫正義流”ChatGPTの使い方とは? 「部下と議論するより面白い」
「部下と議論するより面白い」と株主総会で会場を沸かせた孫正義氏のChatGPTの使い方とは。
孫正義氏とNVIDIAフアンCEOが語り合った「AIの未来」 高性能AIスパコン構築へ
NVIDIA創業者でCEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏が、東京都内で開催した自社イベントで、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏と対談。フアン氏は孫氏と「ここから共に価値を作っていきましょう」と話した。
ChatGPT創業者が慶大生に明かした「ブレイクスルーの起こし方」
ChatGPT開発企業の米OpenAIのCEOが来日し、慶應義塾大学の学生達と対話した。いま世界に革命をもたらしているアルトマンCEOであっても、かつては昼まで寝て、あとはビデオゲームにいそしむ生活をしていた時期もあったという。そこから得た気付きが、ビジネスをする上での原動力にもなっていることとは?
松尾豊東大教授が明かす 日本企業が「ChatGPTでDX」すべき理由
松尾豊東大教授が「生成AIの現状と活用可能性」「国内外の動きと日本のAI戦略」について講演した。
生成AIを導入しても“社員が使わない” 「生成AIプロンプト道場」の奮闘
生成AIを導入したはいいものの、実際に「活用」できていない。こうした課題を抱える企業が少なくない中、独自の社内プロモーションによって生成AIの利用者を伸ばしたのが、資産運用会社のアセットマネジメントOneだ。「生成AIプロンプト道場」の取り組みに迫る。
NVIDIAフアンCEOが「1on1」をしない理由 “階層なき”組織運営は機能する?
半導体大手の米NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、上司と部下が1対1でミーティングをする「1on1」をしないことで知られている。世界で3万人超の従業員を率いているにもかかわらず、直属の部下であるリーダーシップ・チーム(日本で言う経営会議)は60人。その他には階層がないという。特異な組織運営をする狙いを、フアン氏が語った。


