なぜ、最低賃金ニュースは“経営者の悲鳴”ばかり? 労働者の声が消えるオトナの事情:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
最低賃金が大幅に上がった徳島県で、零細企業経営者が「もう人を雇えない」と悲鳴を上げているという。なぜこうした場合、いつもマスコミは経営者側の声ばかりを取り上げるのか。その理由は……。
「消費税ゼロ」も救済にはならない
ちなみに、今でも一定の人たちが主張する「消費税ゼロ」も、低賃金労働者の救済にはならない。年収2000万円の人はもともと消費をたくさんするので、恩恵もでかい。しかし、時給794円で働いている60代女性は、消費も切り詰めているので恩恵もスズメの涙だ。晩ご飯のおかずが一品増え、500円貯金が始められるくらいなので、「低賃金・低消費」という構造的な問題は何も変わらない。
だからこそ、全ての低賃金労働者を引き上げる「ボトムアップ政策」が必要なのだ。
最低賃金を896円、980円と引き上げていけば、労働者に時給794円しか払えない経営者は事業の継続を断念するしかない。今、雇っている人はうまく丸め込んで働かせることができても、周囲の労働条件が良くなっているので、新しい人材確保が難しいからだ。
そうすると、時給794円で働いている労働者は、失業してしまう。ここだけ切り取ると確かに「不幸」なので、ここに注目する人たちは「最低賃金を上げるのも考えものだ」となる。
しかし、これはちょっと見方を変えれば、「低賃金労働からようやく解放された」ということでもある。今の日本は、外国人労働者や高齢者に頼らなくてはいけないほどの人手不足なので、選り好みさえしなければ、いくらでも仕事はあるのだ。そして、ここが大事なポイントだが、そのほとんどが前の職場でもらっていた時給794円よりも高い賃金なのだ。
つまり、最低賃金の引き上げというのは、低賃金労働者にとって一時期的な失業を引き起こすこともあるが、基本的には所得増につながるものだ。日本を30年以上苦しめてきた「低賃金・低消費」から抜け出すには、このような「賃金の底上げ」を47都道府県で進めていくべきなのだ。
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