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「代理店が売ってくれない」と嘆く前に パートナー営業で成果を出す方程式とは飲み会・勉強会に頼らない(3/3 ページ)

多くの日本企業は営業手法に「代理店販売・代理店営業」の方式を採用している。しかし、「パートナーが売ってくれない」「そもそもパートナーにやる気がない」など課題は多い。どうしたらパートナー営業で成果を出せるのか?

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大事なパートナーを他社に取られないよう、気を付けるべきこと

 パートナーのモチベーションをかき立てるロジックが立ち、パートナーを説得し、合意を得て、やる気になったとする。しかし、それはあくまでスタートライン。このモチベーションを維持・増強するコミュニケーションを継続して取っていかなければならない。

 販売力のあるパートナー企業には、常にその営業リソースを狙うベンダーがパートナー提案をしているだろう。つまり、パートナー営業は他社との競争でもある。そのため、一度作り上げたパートナー成功の方程式をより強固にし、関係を強めていく必要がある。

 その関係構築コミュニケーションについても重要なのは「理」。そこで有効になるのが、経済学でよく使用される「エージェンシー理論」の活用だ。

 自社(委託者)とパートナー企業(代理人)の二者がいるとして、その二者の「目標」と「情報」の目線がズレることによって、利害関係は崩れ、取引は失敗してしまうという考えである。自分と第三者の目線が常にあっているとは限らない。


(画像ACより、写真はイメージ)

 パートナーのモチベーションとして定める目標は、大体は販売売上を指す。この目標について常に両者の目線合わせをしなければならない。

 複数ある製品の中で、どれだけ自社の製品の販売をしてもらい、もうけてもらうか。これをパートナーの窓口、部門、ゆくゆくはパートナー全社における共通認識の目標にしていく必要がある。そのための動き方、アプローチ先、商談の仕方、フォローアップを具体的にサポートする。モチベーション理論の通り「期待感」や「確実性」のある目標が重要だ。

 製品情報、サービス内容、提供価値、成功事例、価格やROI……。ベンダーとパートナーとは双方で持っている情報がずれやすい。エージェンシー理論ではこの情報のズレこそ失敗を生むと考えている。そもそも、ベンダーが営業研修で新人を育成し、自社製品を売れるようにするだけでも2〜3カ月はかかるものだ。また市場は変わりゆくもの。製品のアップデートや競合対策なども常にキャッチアップが必要である。

 目標としての報酬の認識を定期的に目線合わせし、成功に向けて戦略的な情報提供をしていくことが重要だ。逆にいえば、報酬面と製品を販売するための情報がクリアになれば、パートナー営業は大きく動き出す

 筆者が代表を務めるopenpageでは、このパートナー営業の論理のデジタル化と共有に対して、相当のDX投資をしている。自社のデジタルセールスルーム(DSR)を活用し、パートナーとの報酬、メリット、目標、商談方法、ターゲット、最新トレンド、販促コンテンツなどを常にデジタル共有。自社のパートナー営業の各担当が、どの会社に対しどこまで提案や情報共有をしているか確認している。

 DSRはパートナーの提案への視聴状況も分かるため、毎朝、パートナーに向けた提案が読み返されているかをチェックし、関係性の改善を図っている。


筆者が代表を務めるopenpageでは、デジタルセールスルーム(DSR)を活用し、パートナーとの報酬、メリット、目標、商談方法、ターゲット、最新トレンド、販促コンテンツなどを常にデジタル共有している(提供:openpage)

 令和時代の営業スタイルは、パートナーとのコミュニケーションを「情」ではなく、論理とデジタルで固めるべきである。パートナーに対する理論武装力は、他ベンダーとの大きな差別化になる。パートナー営業は成功の道のりが長い。その代わり、一度回ると競合企業が持ち得ない営業リソースの獲得に成功する。大変だからこそ、競争優位を作れるわけだ。

筆者プロフィール:藤島 誓也 株式会社openpage代表取締役

2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。2024年にはキヤノンマーケティングジャパン株式会社と資本提携を行い、国内大手企業のデジタルセールス戦略推進を支援している。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。

HP:https://www.openpage.jp/


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