生成AIで成長? コンタクトセンター市場は今後どこまで伸びるか、矢野経済研究所が調査
矢野経済研究所(東京都中野区)の調査によると、2023年度の国内コールセンターサービス市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比5.6%減の1兆902億円だった。一方で、2023年度の国内コンタクトセンターソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比4.0%増の4811億円となり、市場の伸長が見られた。その背景には何があるのか。
矢野経済研究所(東京都中野区)の調査によると、2023年度の国内コールセンターサービス市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比5.6%減の1兆902億円だった。一方で、国内コンタクトセンターソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比4.0%増の4811億円となり、市場の伸長が見られた。その背景には何があるのか。
コンタクトセンター 働き方の変容が市場に影響?
これまで続いてきたコロナ禍を背景とした大型スポット案件(公共分野や官公庁案件)の規模縮小に伴い、国内コールセンターサービス市場は減少した。
また、民間企業においては、国内経済を取り巻く外部環境(生産年齢人口の減少、労働力不足、人件費高騰など)や、チャットやソーシャルメディア対応などの非コール業務が増加していることを背景に、コールセンターのアウトソーシング需要が拡大している。
一方で、コンタクトセンターにおける在宅対応の一般化や、勤務形態の柔軟性拡大に伴うネット環境やセキュリティ面の整備といった課題への対応が進む中、国内コンタクトセンターソリューション市場の規模は拡大傾向にある。
近年、生成AIを活用したテクノロジーが急速に進化している。コールセンターやコンタクトセンターにおけるオペレーター業務の効率化を目的として、応対内容を自動で要約する技術の導入が進んでいる。生成AIを活用したオペレーター支援に対する関心は高まりを見せ、新規案件の条件として生成AIの導入が必須項目となりつつある。
また、慢性的な人手不足の解消や24時間365日のフルタイム対応を実現する手段として、生成AIへの期待が高まっている。今後、オペレーター業務の最適化が進むだけでなく、コールセンターやコンタクトセンターがCX(カスタマーエクスペリエンス)拠点として、顧客の声を量・質の両方の観点で拾いやすくなっていくと考えられる。
2024年度の国内コールセンターサービス市場については、コロナ禍で続いてきた大型スポット案件がほぼ終了したことに伴い、前年度並みで推移するものと予測される。
国内コンタクトセンターソリューション市場は、2024年度以降も着実に伸長していくと考えられる。生成AIの導入やクラウド型コンタクトセンター比率の上昇は単価低下を招く一方で、中小企業などへの普及が期待される。また、Webチャネルとコールセンターを融合させるためのシステム整備も進む見込みだ。
調査は2024年8〜10月に実施。コールセンターサービス提供事業者、コンタクトセンターソリューション提供事業者を対象とした。
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