脱「牛丼一本足」進める吉野家 カレー、から揚げ、おにぎり、ラーメン、どこまで広がる?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)
牛肉価格の高騰などを受けて、牛丼一本足打法からの脱却を進める吉野家。今やポートフォリオは非常に多岐にわたる。それぞれの戦略をまとめていく。
「ココイチ」が君臨するカレーは立地勝負か
これまでも吉野家HDは「せたが屋」「ひるがお」で知られる、せたが屋を2017年に買収し、2019年にも「とりの助」「風雲丸」などを展開するウィズリンクを買収している。ラーメン店向けの麺やスープ、タレなどを製造販売する宝産業も2024年5月に買収し、M&Aを駆使して第3の柱に育成する方針だ。
バブル崩壊以降、ずっと続いてきた日本のデフレ経済の中で、低価格路線で勝ってきたのが吉野家HDだった。牛丼(並盛)の価格は、2012年に一部店舗では250円とかなり安かった。はなまるのかけ(小)にいたっては、同時期105円である。
それが今や、牛肉に米、小麦、食用油など食材価格が高騰。人件費・エネルギー価格も高止まりしているが、牛丼やかけうどんの価格を上げ過ぎると、顧客離れが懸念される。そこで、1000円前後の顧客単価が取れるカレーやから揚げの専門店に至ったのである。
そのうち「もう〜とりこ」では「ビーフカレー」(858円)、「スパイシービーフカレー」(858円)、「バタービーフカレー」(913円)と3種類のカレーを提供し、トッピングも充実させた。ライスは300グラムが基本で、200グラムなら110円引き、増量に応じて価格が上がり、1000グラムまで可能とした。
浅草という立地だけに、インバウンドの顧客が多く、海外の人にとっては格安の値段だろう。同じようにインバウンドに強い、大阪のミナミなどでは問題なく展開できるはずだ。いうまでもなく、カレー業界では絶対王者の「ココイチ」が存在する。まともに勝負していては勝てないことから、立地を選んで出店していくことになるだろう。
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