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妻の育休明け、夫に“突然の転勤令”──「家族のサポート」前提の制度はいつまで続くのか(2/2 ページ)

これまでの転勤制度は家族のサポート前提で成り立っていた面がありました。しかし昨今は共働き世帯が増えており、配偶者のキャリアや子育ての都合から、実際に引っ越しを伴う転勤が難しいケースもあります。暮らしや働き方が多様化する中で、企業は転勤制度をアップデートしていくべきかもしれません。

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「家族のサポート前提」は昔の話 会社が意識すべき4つのポイント

 リモートワークや在宅勤務の普及により、勤務地に縛られない働き方が可能になるなど、人々の仕事の仕方や働く環境への選択肢が広がりました。また働き方改革の流れを受けて、転勤に対する社員や社会の意識が変化し、「転勤ありきの働き方」に疑問を持つ社員が増えています。

 特に若年層では、仕事とプライベートのバランスを重視し、地元での生活や家族との時間を優先する傾向が顕著です。育児や介護など家庭の事情が多様化し、転勤を受け入れることが難しいケースも増加しています。

 例えばAさんのような共働き家庭の場合、共同で育児を担うことが一般的であるため、転勤への対応が一層困難です。

 企業側も人材不足が深刻化する中、転勤を強行することで社員のモチベーションが低下することを恐れ、離職を招くリスクを回避するため、転勤拒否を理由にした懲戒処分を行わないケースが増えています。


(写真はイメージ、ゲッティイメージズ)

 企業はこのような変化に対応するため、以下の対策が求められています。

(1)事前の説明と合意

 転勤の可能性がある職種や業務内容の場合、採用面接時や雇用契約締結時に転勤について十分に説明し、事前に社員の理解を得ておくことが必要です。

(2)個別面談による情報共有

 上司や人事担当者との個別面談を通じて、社員のキャリア形成への希望や家族の状況をあらかじめ把握しておくことが大切です。転勤が管理職への昇進などのキャリアアップと連動している場合、転勤しない場合のキャリアへの影響についても適切に説明する必要があります。

(3)転勤の事前連絡と配慮

 転勤が住居の引っ越しを伴う場合、余裕を持って転勤時期を伝えるようにします。個々の事情を勘案し、直前の発令は避けたいところです。

(4)転勤を前提としない制度の導入

 地域限定社員制度やテレワーク制度を活用することで、住居の移動を伴わない働き方を実現する仕組みを構築することも検討しましょう。

 現代の多様な働き方に対応するためには、転勤を受け入れた社員へのキャリアや報酬の充実を図る一方で、転勤を前提としない柔軟な制度の導入も重要です。こうした取り組みにより、社員のモチベーションを維持し、離職リスクを軽減することが可能になります。

木村政美

1963年生まれ。旅行会社、話し方セミナー運営会社、大手生命保険会社の営業職を経て2004年社会保険労務士・行政書士・FP事務所を開業。労務管理に関する企業相談、セミナー講師、執筆を多数行う。2011年より千葉産業保健総合支援センターメンタルヘルス対策促進員、2020年より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。

現代ビジネスダイヤモンド・オンラインオトナンサーなどで執筆中。


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