認知症の利用客に、どう対応する? 1万9000人の従業員をサポーターに育てたヨーカ堂の狙い(2/2 ページ)
「認知症サポーター養成講座」を従業員向けに取り入れたイトーヨーカ堂。「来店客に適切な応対を行う」という目的があるというが、同社においてどのような効果をもたらしたのか。
当事者に「利用しづらさ」を聞く
従業員が講座を受講することで、ヨーカ堂ではどのような効果が得られたのか。
参加した従業員からは「声のかけ方や接する際の態度を教えてもらったことで、安心して接客ができるようになった」との声が上がっているという。また、「家族の介護でも参考になった」という声があるとのことで、従業員の私生活へのサポートにもつながっているようだ。
店舗にとっても「地域との連携が深まっている」と担当者は話す。地域包括支援センターと連携する背景には、「困りごとが起きたときの相談」など、センターと日常的に協力できる関係を築く狙いもあるという。
同講座から派生して生まれた取り組みもある。
イトーヨーカドー八王子店(東京都八王子市)では、市内の認知症当事者に買い物のデモンストレーションを行ってもらう「練り歩き隊」の取り組みを2022年に実施。デモンストレーション後は、買い物する上で不便な点を当事者からヒアリングし、分かりにくい店内表示などを改めた。
桂台店(横浜市)では市や自治会などと連携し、「スローショッピング」の取り組みを月に1回のペースで実施している。これは、バスによる送迎やボランティアの介助などによって、高齢者が自分のペースで買い物できるようにサポートする活動だ。「高齢者が楽しみながら買い物を自分で行うことで、自信や役割を取り戻すことを目標としている」と広報担当者は説明する。
実施にあたっては従業員からも「高齢者向けのフロアマップを作ってみては」「消耗品・日常品を見やすい位置に置いてみては」といった意見が寄せられたという。このように、「認知症サポーター」養成の取り組みが生かされているようだ。
日常的に高齢者に接する機会が多い総合スーパーや金融機関では、認知症サポーター養成講座を取り入れるケースが増えており、イオンや平和堂も導入している。
イオンは同講座のほか、サービス業向けの資格「サービス介助士」の取得促進も進めている。店舗作りにおいても多様な利用客を意識しており、イオンレイクタウン(埼玉県越谷市)では、大型の見やすい誘導サインや、高齢者などが優先的に利用できるベンチなどを整備している。
いずれもCSR(企業の社会的責任)を意識しての取り組みだ。しかし、受け入れ態勢の整備によって、高齢者の「外出控え」による機会損失が低減されれば、企業側のメリットも少なくないだろう。高齢化が進む中、こうした取り組みの重要性は増してきている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
目指すは「高齢者のたまり場」 イオンの新店舗
イオンが新しくオープンするショッピングセンターでは、健康セミナーやラジオ体操を提供する。高齢者向けの施策を強化していく店舗は今後も増えるだろう。
「店長、本音でいいんですか……?」 ユニーが値引き商品を「パート」に決めてもらう納得の理由
東海地方を中心にスーパー「アピタ」や「ピアゴ」を展開するユニー(愛知県稲沢市)が、ユニークな値下げ施策を行っている。一般的に、販売する側が値下げする商品や価格を決めるが、ユニーは従業員が「値下げしてほしい商品」を投票。その結果から、値下げする商品や価格を決めているのだ。
「イオンでウォーキングする」文化は流行るのか? 実際に体験して「厳しそう」だと感じたワケ
ウォーキングする場所といえば、公園や遊歩道を思い浮かべる人が多いだろう。こうした中、ユニークな場所でウォーキングすることを推奨する動きがある。イオンモールの中をウォーキングする、その名も「イオンモールウォーキング」だ。
「過疎地」にチャンスあり ローソンがポツンと1店舗でも営業できる、2つの理由
ローソンは10月4日、和歌山県田辺市のスーパー跡地に「ローソン龍神村西店」をオープンした。同社は過疎化により小売店が撤退し、食品や日用品の購入が難しい地域へ「地域共生コンビニ」の出店を進めており、龍神村西店もその一環となる。地域共生コンビニの取り組みについて、広報担当者に聞いた。


