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窓口への来店数が半減する中、金沢・北國銀行は「顧客の声」とどう向き合ったのか全社でNPSとVoC活用に挑戦(2/2 ページ)

銀行の窓口への来店者数は、デジタル化の進展によりこの10年間で半減した。ATMの削減やキャッシュレス化が進む一方で、「高齢者が取り残される」「対面での相談機会が減ってしまう」といった不安の声も増えており、金融機関にとってこうした顧客との認識のギャップへの対応は悩みの種となっている。そんな中、北國銀行は2021年にカスタマーサービス部CSグループを新設。顧客推奨度を示す指標「NPS」を活用しながら、顧客の声を“参考にするだけ”で終わらせない仕組みづくりに取り組んできた。

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「現場」と「経営」をつなぐ3つの会議体

 北國銀行では、定期的に重要な施策や新しいサービスへの反響を全社員に向けて共有。また、年に1回はグループ会社役員に向け取り組み状況を報告し、意思決定のできる経営者層も含めて課題について議論を行っている。

 さらには、顧客の声を起点とした改善のPDCAを回すため、3つの会議体も設置している。

 1つ目の「VoCミーティング」では、企画担当者と顧客対応部署の担当者が参加し、個別の改善案を議論する。企画部門だけではなく現場の目線も交えながら、改善対応すべき案件の優先順位付けや、CX向上に向けた課題認識の共有を行う。

 2つ目の「VoC取組会議」では、全ての企画担当部署が参加してVoCミーティングで上がってきた案件への対応方針を決定。横断的な視点で各部署の改善案を議論し、具体的な施策決定につなげていく。

 3つ目は「NPS報告会」。商品・サービスの評価を測るNPSについて、企画担当者や役員に加え、営業担当者やシステム開発担当者も参加し、アンケート結果をもとに改善施策を検討する。

 こうした報告・共有と議論により、参考程度だった顧客の声が、全社の施策に生かせる仕組みが整っていった。

【お詫びと訂正:2025年2月17日、一部表現を修正いたしました】

「来店しない」顧客の本音もつかむNPS

 北國銀行は顧客の声の収集・分析の取り組みの中で、NPSを特に重視している。NPSとは顧客推奨度を示す指標で、「この商品やサービスを友人や同僚に薦めたいか」を11段階で評価してもらうものだ。

 同行がNPSを重視する理由は3つある。1つ目は、顧客ロイヤリティーと収益性の相関が高いこと。経営に役立つ指標として活用でき、社員の納得感も得られやすい。2つ目は、評価を数値化でき、その推移を比較できること。施策の効果を定量的に把握しやすい利点がある。

 そして3つ目が「来店しない・電話しない層」の声も含めて、全体的な評価が把握できる点だ。同行の来店客数は10年で半分程度まで減少しており、従来の窓口や電話での声の収集だけでは不十分だった。電話は困りごとのある人、窓口は用事がある人からの声が中心だが、NPSでは積極的に意見を言わない層も含めたサービス全体への評価を把握できる。

 同行では2016年からインターネットバンキングやデビットカードなど、商品単位でのNPS調査を実施していた。2021年のCSグループ設置後は、商品単位の調査に加え、オンライン相談などのチャネル単位での調査も実施するように。2024年からは北國銀行全体への評価を把握するための調査も開始するなど、顧客の声をより多角的に収集・分析できる体制を整えている。


(写真はイメージ、ゲッティイメージズより)

 北國銀行はNPSを重視する中で、分析の高度化も進めてきた。2022年にはエモーションテック社(東京都港区)の「EmotionTech CX」を導入し、顧客体験と推奨度の相関関係を可視化し、分析の精度を高めてきた。

 そうした取り組みは着実に成果を上げている。中でも法人向けNPSアンケートでは、経営層も含めた議論を重ね、次年度の施策立案にも活用するようになった。さらに事業成長に関する指標との相関関係も示すことができた。

 北國銀行カスタマーサービス部CSグループマネージャーの山本宏美さんは「アンケート対象のサービスがどんな評価を得ているのか、意思決定する層にも伝わるようになり、社内の巻き込みも進んできました」と手応えを語る。

 同行は次なるステップとして、これまで培ってきた顧客の声の収集・分析の仕組みを、全社戦略により深く組み込んでいく考えだ。部署横断での効果測定や意思決定への活用はもちろん、従業員満足度と顧客満足度の相関分析など、組織全体の成長につながる取り組みも始めている。

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