クルマの「音」は演出できる? EV時代に“サウンドビジネス”が広がってきた:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
騒音規制が厳しくなった今も、エンジン音や排気音などのサウンドはドライバーの気分を高める重要な要素だ。近年は高性能EVでも、走行音などを演出するシステムを導入している。自動車メーカーなどは個人ユーザーの満足度を高めるために工夫を凝らしている。
運転の気分を盛り上げる、クルマのサウンド技術
だが、騒音規制は厳しくなっていく一方で、欧州では純正マフラーと同じ音量しか認められないようになると、ドイツのチューニングメーカーやマフラーメーカーはその対応策を考え出すようになる。
音量は抑えつつ、純正マフラーよりも力強い低音を強調するなど、排気音の質にこだわるようになり、排気抵抗を抑えることでエンジンの能力をより引き出すだけでなく、マフラーの仕様にもさまざまな工夫、努力が注がれていくことになる。
旧車で長く生産されたローバーミニのマフラーはさまざまなブランドから販売されており、オーナーが好みで選べる環境が整う。写真は音質にこだわり、さまざまな車種で快音を響かせると評価の高い日本のマフラーメーカー、サクラムのマフラー
このころからクルマのサウンドビジネスが広がり始める。クルマのチューニング文化が根付いていたドイツでは、マフラーサウンドを楽しめなくなると、その代替手段としてマフラー出口付近にスピーカーを装着し、加速時には排気音を増幅する仕組みを作り上げた。
それくらい当時はマフラーから放たれるサウンドが、ドライビングの気分を高めるスパイスとして重要視されていたのだ。
また音響機器メーカーのBOSEは、カーオーディオシステムとしての音響システムとは別に、車内の走行音の演出にも開発分野を広げていく。車内の騒音に対して逆位相(2つの振動、または波動の位相が反対であること)の音を作り出して打ち消すノイズキャンセリング技術で静粛性を高めたり、それを応用してエンジン音や排気音をスピーカーから放つ音で補完したりしている。
マツダは、MAZDA3の先代モデルであるアクセラからディーゼルエンジンにBOSEのサウンドチューニングを導入していた。現行のMAZDA3ではピストンピン内部にディーゼルエンジンのノイズを低減させるナチュラルサウンドスムーサーという部品を追加するなど、ディーゼル車であっても気持ちのいい加速感を演出する音作りに余念がない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
スポーツカーに未来はあるのか “走りの刺激”を伝え続ける方法
スポーツカーはクルマ好きの関心を集め続けているが、乗り回せる環境が限られるようになってきた。一方、マツダ・ロードスターなど価値のあるモデルも残っている。トヨタは運転を楽しむ層に向けた施策を展開している。今後のスポーツカーを巡る取り組みにも注目だ。
2人乗車はなぜ難しい? 超小型モビリティ「Lean3」が日本では1人乗りの残念な事情
2024年のジャパンモビリティショー ビズウィークで注目されていたのは「Lean3」という小型モビリティ。2人乗車仕様の販売を実現するには、まだ手探りの状況だ。官民挙げて超小型モビリティを普及させ、ビジネスを広げていってほしい。
なぜクルマのコーティングが人気なのか ユーザー心理を利用する術
カーディテイリングビジネスが活況だ。日本では1980年代から徐々に市場が拡大。コーティング技術や洗車機の性能も向上し、安心できるサービスになっている。需要に応じて形を変えながら、さらに発展していきそうだ。
セダンが売れる時代はもう来ないのか クルマの進化で薄れていく魅力
SUVやミニバンと比べて、セダンの人気は衰退している。目新しさが魅力だったSUVも走行性能などが高められたことに加え、ドライバーの意識も変わっている。スポーツカーも衰退しているが、所有して運転する楽しさを追求できるクルマも必要だ。
なぜテールランプがまぶしいクルマが増えているのか クルマづくりに欠けている視点
前走車のテールランプをまぶしく感じることが増えた。平時にリアフォグランプを点灯するのは問題外だが、ブレーキランプの規制変更によるデザイン性の追求という要因もありそうだ。環境性能や安全性だけではなく、周囲に配慮する工夫もますます必要になるだろう。