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企業と働き手、フジテレビ問題から見える「パワーバランス」の変化とは?働き方の見取り図(2/3 ページ)

企業は、いついかなる場合でも組織は個人より強い立場にいるという幻想を捨て去る必要がある。職場の立場はまだまだ働き手よりも強いとはいえ、パワーバランスの偏りは徐々に修正される方向へと向かっている。

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労働組合が機能しづらくなっている理由

 「主張する」「耐える」「逃げる」のどれを選択しても、必ず何らかのリスクやストレスがつきまとう点は共通しています。ただ、「耐える」「逃げる」という2つの選択肢については、職場を変えることはできません。職場を変えられる可能性があるのは、「主張するを選択した時だけです。

 主張する時、自分の味方になって一緒に声をあげてくれる存在がいると心強いものです。代表格が労働組合でしょう。ところが、労働組合は年々組織率が下降し続けています。厚生労働省が発表した2024年の推定組織率は16.1%です。

 「令和元年労使コミュニケーション調査」によると、企業内労働組合に加入しない理由の上位2つは「労働組合や組合活動に興味がないから」と「加入するメリットが見出せないから」。

 しかし、何かのきっかけで心のどこかで感じていた不満が大きくなってくると、職場環境を変えるために主張しようという思いが芽生え、労働組合の必要性やありがたみを感じるかもしれません。80人だった労働組合加入者が、騒動を機に500人まで増えたと報じられたフジテレビの一件は、まさにそんな事例の一つと言えます。


写真はイメージ

 意に反した不合理な出来事から働き手が身を守る際、労働組合への加入は有効な手段であるはずです。しかし、いざ加入するとなると、労働組合に対するこれまでのイメージを含めてさまざまな要因がハードルになっていると感じる面があります。大きく5点挙げたいと思います。

 1つ目は、先鋭的なイメージがあることです。過激な主張を振りかざして経営陣や職場を攻撃したり、デモ行進するなどの鮮烈な印象と結びつくと、働き手は敬遠してしまうかもしれません。

 次に、労働組合への加入で経営陣や管理職に警戒心を抱かせることが連想される点です。評価を上げたい、昇進・昇格したいと考える働き手からすると、経営陣や管理職を刺激しそうな活動は避けたいでしょう。

 3点目は、数多ある労働組合やユニオンの主張が、自分の主張や志向に合致するとは限らない点です。働き手の志向は個別最適化に向かっています。ひたすら仕事に邁進したい人もいれば、最低限の仕事だけこなしてプライベートの方を充実させたい人など、働き手の志向は多種多様です。それら志向の違いは、時に働き手同士の対立を生むこともあります。

 4点目は活動に参加するとお金がかかりそうなこと。物価高騰が続く中で月に数千円の出費でも厳しいと感じる人は少なくありません。5点目は、活動に時間をとられそうなこと。男性の育休取得者が増えるなど、性別を問わず仕事と家庭の両立が課題になりつつある中、組合活動に限らず、仕事+αの時間を捻出することの難易度は上がってきています。

 総務省の労働力調査によると2024年12月の就業者数は6811万人ですが、ベストな働き方は一人一人異なります。多様性が尊重される社会になりつつある中で必要とされるのは、異なる一人一人の志向に寄り添い手助けする機能です。

 しかし、個々に寄り添おうとするほど、同じ志向の下に集う数は分散し少なくなってしまいます。労働組合の機能が社会にとって重要であること自体に変わりはないものの、集団になって力を合わせるということが、しづらい世の中になってきた印象は否めません。

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