企業と働き手、フジテレビ問題から見える「パワーバランス」の変化とは?:働き方の見取り図(1/3 ページ)
企業は、いついかなる場合でも組織は個人より強い立場にいるという幻想を捨て去る必要がある。職場の立場はまだまだ働き手よりも強いとはいえ、パワーバランスの偏りは徐々に修正される方向へと向かっている。
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元社員への人権侵害などが取り沙汰される、フジテレビをめぐる一連の問題。まだ事実の詳細は見えないものの、職場からの指示はそれが働き手の意に反するものであったとしても、場を支配する空気にはある種の強制力が備わっている懸念を再認識する機会となりました。
どれだけフラットといわれる組織であっても、少なからずヒエラルキーや上下関係は生じるものです。それがよい師弟関係の場合もありますが、一見すると仲がよさそうでも、内実はストロングマネジメントで押さえつけられた不当な支配従属関係になっていることもあります。
後者の場合、理不尽な業務指示や人事考課、職場内でのイジリなど、力関係で弱い立場にいる働き手は何かと不利益を被ることになりがちです。
職場の中に抗いがたい上下関係が構築された時、働き手は理不尽な要求からどうやって身を守ればよいのでしょうか。他方で、働き手に不利益を被らせないために、企業側が心得ておくべきこととは何でしょうか?
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫
愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。
所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。
NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
働き手が取り得る「3つの選択肢」
「この指示は、さすがに度が過ぎてない?」
このように感じても、反論しづらい空気が出来上がっていると、空気を壊さないよう自分の本心を押さえつけてしまうことがあるものです。
組織の中で仕事をしていると、理不尽な要求以外にもさまざまな種類の「意に反した不合理な出来事」に遭遇します。例えば、給与や昇進・昇格、任される仕事内容。さらには「上司は自分にだけつらく当たる」など、ちょっとした職場内での扱いに違和感を覚えたりすることもあります。
こうした出来事に対し、働き手がとり得る選択肢は主に「主張する」「耐える」「逃げる」の3つです。しかし、極端な上下関係ができている職場で「それはおかしいと思います」などと主張すると事を荒立て、却って目をつけられてしまうリスクが頭を過ぎるかもしれません。
主張せずに耐えることを選択すれば、事を荒立てずに済みますが、受け流せる範囲を超えて嫌悪感が強まるほどストレスは蓄積され、働き手の心身は蝕(むしば)まれてしまいます。
主張するのも耐えるのも難しい場合、残される選択肢は逃げることです。時にストレスは、正常な判断力を人から奪います。ストレスが原因で自ら命を絶ってしまうようなケースもあるだけに、逃げることも自分を守る上で有効な選択肢です。
いま退職代行サービスの利用が増えているといわれますが、無理して職場に居続けてストレスを溜め続けるより、その場から逃げることを選択するのは決して責められるものではありません。ただ、逃げた先でも同じことが起きたり、さらに酷い職場環境だったりする可能性があることも頭に入れておく必要はあります。
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