「10億円の家賃回収増」「平均年齢68歳の管理人」 DXで実現した、平均家賃3.7万円の賃貸ビジネス(1/2 ページ)
「紙とファックス」から「iPhoneとLINE WORKS」へ。手頃な家賃の賃貸住宅で、高齢管理人のデジタル活用が生み出した驚きの成果とは。ビレッジハウスマネジメントのDXに迫る。
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KDDIが経理のオペレーション改革にAIを活用し、得た成果とは。従来の業務プロセスから脱却を図る中で直面した課題、失敗と成功、今後の展望を語る。
「平均年齢68歳の管理人さんがスマホを使いこなして、業務に取り組んでいます」
そう語るのは、全国47都道府県で約10.8万戸の賃貸住宅を運営するビレッジハウス・マネジメント(以下、ビレッジハウス)の代表取締役社長兼CEO岩元龍彦氏だ。平均年齢は68歳、全国152カ所の管理事務所に配置された548人の住宅担当者(管理人)たちが、iPhoneとLINE WORKSを活用し、日々の業務をこなしている。
同社は創業から多数のDXプロジェクトを展開してきた。高齢の管理人のDX、申込業務の効率化による残業費98%削減や10億円に上る家賃回収の最適化など、業務基盤の構築を進め大きな成果を出し続けている。なぜ、実現できたのか? その秘密に迫る。
公営住宅減少の隙間を埋める、全国平均家賃3.7万円の「アフォーダブル住宅」
同社のDXの種明かしをする前に、まず同社が運営する「アフォーダブル住宅」を取り巻く市場を紹介しよう。
2005年をピークに減少を続ける公営住宅の代替として、民間による「アフォーダブルハウジング(手頃な価格帯の住宅)」が台頭している。2017年、米国の投資運用会社、フォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)の日本法人は、「雇用促進住宅」と呼ばれる大規模な住宅群を約640億円で取得。全国に点在する物件群の管理のためビレッジハウスを設立し、2025年1月時点で、全国1063物件、2942棟、10万7948万戸を運営・管理している。
これらの物件は、もともと独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営し、雇用保険の被保険者向けに低価格で提供されてきた。しかし2007年、厚生労働省は2021年までに事業を廃止し、民間譲渡する方針を決定。築年数は経過しているものの、広い間取りと抑えめの家賃という特性を持つ団地群に、フォートレスは新たな可能性を見いだしたというわけだ。
「新しい物件を建てれば建設費用がかさみ、家賃は必然的に上がってしまう。しかし、既存の物件を長く使うことで、中低所得者向けの家賃設定が可能になる」(岩元氏)
全国平均3万7086円という家賃設定は増加する外国人労働者のニーズとも合致し、当初33.3%だった入居率は2024年11月末時点で81.1%まで上昇。社会インフラとしての役割を果たしつつある。
DXにより年間10億円の家賃回収増と、申込業務の残業費98%削減を実現
ビレッジハウスは創業と同時に賃貸物件の運営・建物管理に必要な全ての機能を内製化し、WebサイトやコールセンターなどDXを前提とした組織づくりをスタートさせた。
そんなDXプロジェクトは目覚ましい成果を上げている。最も大きな効果が表れたのが家賃回収で、セールスフォースを活用した顧客情報の一元管理により、年間350億円の家賃収入に対して約10億円の回収改善を実現した。「入居者の属性や給料日の情報まで把握できているため、家賃回収の最適なタイミングが分かるようになった」(岩元氏)
社内業務の効率化も著しい。今までは5〜6人体制で月に100件以上の入居申込を処理していたが、電子化により該当部門の残業費は月額120万円から2万円へと約98%削減。電子申込フォームには必要な情報が漏れなく入力される仕組みを実装し、申込者とのやり取りが大幅に減少した。
事業運営面では、全国の管理人とのコミュニケーション改革が進んだ。LINE WORKSの導入により、これまでFAXや電話が中心だった日々の業務連絡が、写真付きのリアルタイム報告に変化。「現場の状況がすぐに本部に伝わり、スピーディーな意思決定が可能になった」(岩元氏)
ビレッジハウスのDX成功の鍵は「現場起点」の開発姿勢にある。2020年のセールスフォース導入では、「システムありきではなく、業務ファーストで進めた」と岩元氏。現場スタッフを含めたプロジェクトチームを結成し、実際の業務フローに基づいて必要な機能を洗い出し、段階的にカスタマイズを重ねた。この現場重視のアプローチが、先述の業務効率化(残業費の約98%削減など)の成果につながっている。
他にも契約事務センターやコールセンターの効率化、滞納家賃の督促データの一元管理、さらには外国人入居者とのコミュニケーション記録の蓄積など、同社が進めてきたDXは多岐にわたる。
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