採用難だった老舗しょうが企業、お金をかけずに応募7倍 「脱・ハローワーク頼み」戦略の裏側(1/2 ページ)
高知県のしょうが企業・あさのは採用に苦労していた。ハローワークからの流入が減少したことに加え、離職率も高かった。そこから費用をかけずに、どのように応募を7倍に増やしたのか。取材した。
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地方企業の採用活動は、いまだにハローワークが主流になっているケースが少なくない。
高知県の老舗しょうが企業、あさの(高知県香美市)は、エン・ジャパンが提供する「engage」を活用して採用サイトを立ち上げ、8カ月で応募数を7倍以上(13件から100件)に増やすことに成功。これまでハローワーク頼みだった採用活動をデジタル化することで、早期離職率も10%超から6〜7%程度まで改善した。
同社は2017年に初めて採用担当者を置き、採用プロセスの整備を皮切りに改革を進めてきた。この取り組みは新規採用の改善にとどまらず、既存社員の会社理解を深める効果ももたらしているという。
同社で採用改革を主導してきた吉本雄大氏(商品開発部課長 兼 採用担当)に、その取り組みと成果について話を聞いた。
脱・ハローワーク頼み 採用数も離職率も課題
あさのは、しょうがの生産量が国内1位の高知県に本社工場を構える。1950年の創業以来、しょうがの栽培事業と加工販売を手掛け、大手食品メーカーのジンジャーエールや調味料向けの原料供給も行う。70社を超える契約農家との連携による「仕入れ力」と、年間約1万トンという国内最大級の取扱量を誇る「供給力」に強みを持つ。
「しょうがという農産物を、栽培から販売まで一気通貫で手掛ける全国的にも珍しいビジネスモデルです」と語るのは、同社の商品開発部で採用も担当する吉本雄大氏だ。
2010年に新卒入社した吉本氏は、2017年に同社初の採用担当者となった。それまでは役員が兼務で採用を担当しており、ハローワークと地元大学への直接求人が主な採用手法だった。当初は需要と供給のバランスが取れており一定の採用はできていたものの、選考プロセスは特に整備されていなかった。応募者の適性を十分に見極めないまま採用を決めていたこともあり、採用ミスマッチによる早期退職が発生することも少なくなかったという。
採用担当になった吉本氏がまず着手したのは、ハローワークの求人票の全面的な見直しだった。会社の魅力や仕事内容をより詳しく伝えられるよう情報を充実させ、ポジションごとに求人を分割するなど、求職者目線での改善を進めた。
採用環境が厳しさを増す中、同社は採用を経営課題の一つと位置付け、2020年に採用支援の専門家を外部顧問として招聘(しょうへい)。顧問から、ハローワークの求人票の見直しと併せて、すでにアカウント登録していた「engage」の活用、特に自社の採用サイトを作ることを提案された。
「もともと採用に予算をかけてこなかった会社なので、人は採りたいけどコストはかけたくないという矛盾がありました」と吉本氏は当時を振り返る。engageは基本機能を0円から利用できることから、この課題を解決できるツールとして採用を決めた。
初の採用サイト作成にあたっては、社長の経営理念や方針を上部に配置。職場の雰囲気や仕事内容を想像しやすいよう、社員の働いている様子が分かる写真も多く掲載した。また、毎月の更新を心がけ、しょうがのレシピ情報なども掲載するなど、会社の姿勢や文化が伝わるコンテンツづくりを意識した。
「社長が『理念に共感してくれる人材を採用したい』と常々話していたので、その思いが伝わるページ作りを意識しました」(吉本氏)
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