“AI菓子職人”実装カフェを万博に出店 「バウムクーヘン食べ放題」の狙いは?:ユーハイム社長が語る
ユーハイムは、大阪・関西万博の「EARTH TABLE〜未来食堂〜」エリアに、AI搭載バウムクーヘン焼成機「THEO」(テオ)を実装したカフェ「THEO’S CAFE by JUCHHEIM」を出店する。
洋菓子大手のユーハイム(神戸市中央区)は、大阪・関西万博の「EARTH TABLE〜未来食堂〜」エリアに、AI搭載バウムクーヘン焼成機「THEO」(テオ)を実装したカフェ「THEO’S CAFE by JUCHHEIM」を出店する。大阪・関西万博を通じて、AIと人が共に働く「未来のお菓子屋」の姿を発信する狙い。
ユーハイム社長が語る「AIの2つの特徴」とは?
お菓子を大量に届けるためには、大規模な工場での生産と、全国の拠点への配送が不可欠だ。しかし、その生産や配送過程では環境に負荷がかかり、顧客の手元に届くまでに時間がかかるという課題があった。
この課題に対しユーハイムが出した答えの一つが、2020年に開発したTHEOだった。THEOはユーハイムの職人から焼成データを学び、人間の職人と遜色なくバウムクーヘンを焼成できる「AI菓子職人」だ。
THEOは小型で設置が容易なため、どこでも誰でもバウムクーヘンを焼けるのが特徴だ。これにより、大規模な工場での一括生産や配送に頼らず、必要な場所で焼きたてのバウムクーヘンを提供できる仕組みを実現した。ユーハイムは、この革新を通じて「未来のお菓子屋さん」の在り方を見いだそうとしている。2月12日に都内で開いた万博出展記念PRイベントで、河本英雄社長は以下のようにTHEOの特徴を説明した。
「THEOでは、熟練の職人のバームクーヘンを焼く技術を、何度も何度も実機で焼きながら、データに上げて学習させます。だいたい職人が3日間くらいかけて、(バウムクーヘンを)15本ぐらい、ぐっと集中して焼くと、その職人のベストの焼き方を学習できます。すると、人間よりも優れた学習能力を発揮します。これはAIの一つの特徴です」(河本社長)
ユーハイムは2023年に日本創業100周年を迎え「お菓子には世界を平和にする力がある Peace by Piece」を、企業の理念に掲げた。世界を平和にする夢の実現に向けて、大阪・関西万博に「THEO’S CAFE」を出店。「夢の卵」をテーマに、AIと人が共に働く未来のカフェを開く。
店舗の内装は「卵」をモチーフにしたデザインが特徴で、明るく柔らかな空間に仕上げた。壁やテーブルの素材には、ユーハイムがバウムクーヘン作りで使用した卵の殻を再利用し、サステナブルな未来のお菓子屋さんの在り方を表現している。店内では3台のAI職人THEOが、スタッフと共に毎日焼きたてのバウムクーヘンを提供する。
THEOの強みは「世界中のどこでも、誰にでも、焼きたてのバウムクーヘン」を届けられることだという。好きなときに焼きたてのバウムクーヘンを楽しめる「食べ放題」を実施し、未来のスイーツタイムを体験できる新たな価値を創出する。THEO’S CAFEでは余ったバウムクーヘン生地を無駄にしないために、万博会場内に出展するユーハイムのフードトラックで、新たなお菓子に生まれ変わらせる「リ・ボーンクーヘン」も展開する予定だ。
河本社長は、AIのもう一つの特徴として「持久力、忍耐力、再現性」を挙げ「人間よりもかなり優れている」と語る。
「ベテランの職人でもずっと焼き続けると、時には成功したり失敗したりします。でも(THEOなら)ベストなものを常に焼き続けられます。極端な話、休憩時間がいらない。理論上は24時間焼き続けられますから。われわれはこのカフェで、THEOが持っている力を最大限、引き出したいと考えました。それは、ひたすらその職人のベストのものを焼き続けること。そして焼き続けたバウムクーヘンを、どんどんお客さんに食べ放題として提供することだと考えました」(河本社長)
AIは焼き続ける。客はお腹一杯食べる。AIと人間の新たな関係が、万博で見られそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「AI菓子職人」を全国に派遣 神戸の100年企業が起こした「お菓子作り」のDX
神戸市の老舗菓子企業「ユーハイム」は業界でもあまり例がない、菓子の生産にAIを導入している。河本英雄社長に背景を語ってもらった。
“孫正義流”ChatGPTの使い方とは? 「部下と議論するより面白い」
「部下と議論するより面白い」と株主総会で会場を沸かせた孫正義氏のChatGPTの使い方とは。
AI人材に投資し売上高3000億円へ SHIFT社長が描くAIエージェント革命
ソフトウェアの品質保証を軸にさまざまなDX事業を展開するSHIFTは、2025年8月までにAIエンジニアを現在の約50人から500人に増強する計画を掲げた。創業者の丹下大社長が自ら語った、その狙いと具体策とは?
ChatGPT創業者が慶大生に明かした「ブレイクスルーの起こし方」
ChatGPT開発企業の米OpenAIのCEOが来日し、慶應義塾大学の学生達と対話した。いま世界に革命をもたらしているアルトマンCEOであっても、かつては昼まで寝て、あとはビデオゲームにいそしむ生活をしていた時期もあったという。そこから得た気付きが、ビジネスをする上での原動力にもなっていることとは?
松尾豊東大教授が明かす 日本企業が「ChatGPTでDX」すべき理由
松尾豊東大教授が「生成AIの現状と活用可能性」「国内外の動きと日本のAI戦略」について講演した。



