2015年7月27日以前の記事
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「軍艦島ツアー」予約が1.6倍に 10万円プランも売れる観光の変化『海に眠るダイヤモンド』の舞台(6/6 ページ)

長崎県が誇る世界文化遺産「軍艦島」の注目度が上昇している。日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』の舞台となった影響が大きく、放送開始後の軍艦島上陸ツアーの予約数が急増。現地でツアーの販売戦略などを聞いた。

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求められるのは、適切な保存管理

 長崎県観光連盟によると、「軍艦島は長崎県へ誘客する大きなきっかけであり、長崎県の広告塔的な存在」だという。観光コンテンツとしての期待値は高く、軍艦島を目当てに訪れた観光客に長崎市内や県内の周遊を促せる可能性もあるだろう。


崩壊が進む軍艦島は寄付金を募って、整備を進めている(ユニバーサルワーカーズ社提供)

 一方で、軍艦島を後世に引き継ぐには、適切な保存管理が欠かせない。長崎市では整備の寄付金の受け入れ先として、2015年9月に端島(軍艦島)整備基金を設置。ふるさと納税でツアーを販売したり、企業や個人に寄付を募ったりしている。

 端島炭坑跡には対象施設が相当数あり、長期にわたる整備が必要だ。そこで、長崎市は2018度から30年間の整備スケジュールを作成し、整備事業費は147.6億円を見積もっている。基金の目標額57.7億円に対し、2023年度末時点の基金積立額は15.6億円。目標の達成率は、27.0%にとどまっている。

 軍艦島コンシェルジュも売り上げの一部として、これまでに400万円弱を寄付している。久遠氏は「徐々に整備環境が整ってきているが、専門家によると軍艦島の護岸整備は世界でもトップレベルに難しいようだ」と説明した。


筆者が訪れた際、第3竪坑捲座跡(たてこうまきざ)は整備中だった(筆者撮影)

 長崎市は、整備状況を以下のように回答した。

 「現在は、世界遺産の普遍的価値に貢献する『護岸遺構』と石炭の生産施設遺構のうち、『第3竪坑捲座跡(たてこうまきざ)』の整備を行っています。護岸遺構は景観に配慮しながら護岸の機能を強化します。第3竪坑捲座跡は現在の形態を維持して、外観の変更は必要最小限にとどめます」(長崎市の担当者)

 上陸率は高いが、3回参加して一度も上陸できない人がいるほど運任せの軍艦島上陸ツアー。上陸を判断する船長には高いスキルが必要で、大型船の維持には年間2000万円、5年に1回5000万円の検査費用がかかるという。唯一無二の観光コンテンツだが、事業者の苦労は多い。10万円のプレミアム・スタディツアーの行く末も気になるところだ。

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