「AIソムリエ」が日本酒を提案、ブロックチェーン技術でお酒の「開封場所」を追跡……酒造DXの“最先端”(2/2 ページ)
長い歴史を持つ「日本酒」。テクノロジーとは縁遠いイメージがあるかもしれませんが、近年酒造業界でもDXを活用して、業務負担の軽減や商品価値の向上に取り組む例が増えてきています。
IoT:のまっせ
「IoT(Internet of Things)」とは「モノのインターネット」を意味し、家電製品・車・建物など、様々な「モノ」をインターネットとつなぐ技術です。遠隔操作によって外出時でもエアコンの操作ができるのもIoT技術によるものです。
なかでも、シンク(福島県会津若松市)が提供する「のまっせ」は、地元会津の漆塗りをイメージしたコンパクトなIoT日本酒ディスペンサーです。
個人に紐づいたQRコードをかざすことで、誰が、いつ、どの順番で、どれだけ飲んだのか、という情報をクラウド上に蓄積することができます。実際に飲んだお酒のデータを記録できるので、好みの日本酒を推奨することが可能になります。
同時に、「30代の男性にこんなお酒が好まれている」といった属性情報を酒蔵側へフィードバックすることで、商品開発に役立てることもできます。省力化だけではなく飲み手とメーカーの満足度向上を兼ね備えています。
ブロックチェーン:SHIMENAWA(しめなわ)
ブロックチェーンとは、情報を記録・管理するための技術で改ざんを防ぎ、データの正しさを証明することができる技術です。ブロックチェーンは偽造ができないという点を活かし、暗号資産で活用されているほか、NFTと呼ばれるデジタルアイテムの所有権を証明する特別な証明書を発行することもできます。
SBIトレーサビリティ(東京都港区)が展開するSHIMENAWAは、ブロックチェーン技術を活用してサービスを提供しています。誰が醸造した日本酒かを証明することで、偽物ではないことを証明できることに加え、開封を検知することで、いつごろ、どこで開けられたのか、などのデータを取ることが可能です。また、開封された瞬間をマッピングすることで、自社の商品の本当の消費場所を知ることができます。
そのほか、リーフ・パブリケーションズ(京都市)が提供する「Sake World NFT」では、NFTで購入した日本酒の資産化や、熟成酒の価値化による個人間売買の仕組みが構築されています。
デジタル技術の酒造業界での活用は、まだ黎明期です。人材不足で悩む酒蔵にとっては特にデジタル技術の活用が救世主になり得ます。
極端な話ですが、今後例えばAIの活用が進むことで、酒づくりの全工程を指示するAI杜氏が登場するかもしれません。
| ●筆者プロフィール:高橋 理人(たかはし | まさと) |
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株式会社蔵楽代表/呑み手のプロ
早稲田大学商学部を卒業後、大手化学メーカーに新卒入社。社会人初の赴任地である新潟県糸魚川市にて日本酒に開眼。その後、大手コンサルティングファームにて製造業の業務・経営改革に従事。コロナ禍を契機に、2020年10月に株式会社蔵楽(クラク)を創業。
「酒蔵を世界一働きたい場所に」をビジョンとして、東南アジア向けの輸出、日本酒サブスク「TAMESHU(タメシュ)」の他、酒蔵のプロデュースや酒イベントの企画など幅広い事業を行っている。製造から流通まで酒業界全般に対する幅広い知見を持つ。現場と「苦楽」を共に、汗をかきながら寄り添う支援を得意とする。座右の銘は「一周回って本醸造」。J.S.A.認定SAKE DIPLOMA、ワインエキスパート、SSI認定国際唎酒師などを取得。
酒ビジネス 飲むのが好きな人から専門家まで楽しく読める酒の教養
日本酒はビールやウイスキー、ワインにも匹敵する、「世界的な飲みもの」になりつつあります。
例えば、「獺祭 磨き その先へ」という日本酒をご存じでしょうか。
これは2014年に安倍元首相がアメリカのオバマ元大統領に訪日記念としてプレゼントしたことでも知られる、1本4万円を超える日本酒の銘柄です。
海外に目を向けると、アメリカの俳優ロバート・デ・ニーロは新潟県の佐渡島の日本酒「北雪」に 惚れ込み、自家用ジェットで買い付けに来たと言われています。
プロゴルファーのタイガー・ウッズは、不調に苦しんでいた際に薦められた日本酒を飲んでスランプを脱出したそうです。
上に紹介した以外にも、日本酒は国内に限らず、世界中で酒蔵が生まれる注目のジャンル。
日本酒は今、「世界の教養」として世界各国から認識されはじめているのです。
本書では酒蔵コーディネーターとして活躍し、年間2000種類以上の日本酒を呑んできた著者による、「日本酒の教養」としてまとめています。
この本を読めば、ビジネスから日常の雑談まで、様々なシーンで日本酒について語れること間違いなしです。
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