「姫、お待ちしておりました」忍者レストラン、“接待需要”に勝機? 海外富裕層も魅了する戦略とは(1/4 ページ)
東京で2001年から続く「忍者レストラン」が好調だ。コロナ禍で多くのテーマレストランが閉店する中、なぜ“生き残り”を果たせたのか。
世界中から予約が絶えないほど人気なのに、訪れてみても入り口はさっぱり見つからない――そんな一風変わったレストランがある。「忍者の忍び里」をテーマにした、「NINJA TOKYO」(東京都千代田区)だ。
もともとこの店は、2023年の9月まで東京の赤坂にあった(開店当初の名前は「NINJA AKASAKA」、のち改名)。オープンしたのは2001年のことで、「監獄レストラン」「異世界レストラン」「ロボットレストラン」といった、テーマレストランのいわば先駆けのような存在だった。
2022年に最後の店舗が閉店した「監獄レストラン ザ・ロックアップ」がそうだったように、少なくないエンタメ系の飲食店が、コロナ禍によって幕を閉じた。NINJA TOKYOもかつてはニューヨーク、西新宿(東京)、四条河原町(京都)の3カ所にフランチャイズ店を展開していたが、コロナ禍の影響などでいずれも閉店している(西新宿の店舗は、ビルの建て替えにより閉店)。
赤坂にあった直営店も、一時は半年にわたる休業を余儀なくされたというが、なぜ“生き残り”を果たせたのか。
インバウンド需要厚く
NINJA TOKYOがあるのは、大手町駅直結「新大手町ビル」の地下1階。訪れてみると、昭和30年代の雰囲気をかもし出す、たばこ屋や理髪店、不動産屋が立ち並ぶ一角がある。入店するためには、この「フェイク」の街並みに隠されている、予約客にしか知らされないインターフォンを押さなければならない。
来訪を告げると、写真館の一室に案内される。すると隠し扉から忍者が現れ、来店客は「殿」もしくは「姫」として、レストランの中に通される……という趣向だ(ちなみに海外からのお客は「Sir」「Princess」などと呼ばれるとのこと)。
提供されるのは、いずれも和牛など国産の食材にこだわった、高級感を重視した料理。ソムリエも4人配置されている。食事の最中には「上級忍者」と呼ばれるプロのマジシャンがテーブルマジックを繰り広げるなど、お客を飽きさせない工夫が凝らされている。
……と、エンターテインメント要素と“ハイクラスさ”を両立させていることから、来店客の多くを占めているのは外国人旅行者だ。「多い日には8〜9割」に上るといい、「NINJA TOKYOを訪れるために日本にやってきたという方も少なくありません」と、自身も忍者として“頭領”の肩書を持つマネージャーの金原翔太朗氏は話す。その内訳は「シーズンにもよる」というものの、カナダ、タイ、中国、オーストラリア……と多種多様だ。
大手町という立地も影響し、接待目的でのビジネス利用や、記念日などに訪れるカップルも多い。このため、6歳未満の乳幼児は来店できないという「年齢制限」も設けている。
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