ガスト、値上げしても客離れず すかいらーくHDの「二極化」戦略とは(2/2 ページ)
原材料価格などの高騰が続く中、好調のすかいらーくHD。背景には、「購買力の分析」によって打ち出す価格設定・メニュー展開の施策があるようだ。
地域別価格にも手応え
2点目は、コロナ禍によって拡大した購買力格差を背景に、2022年9月から導入した「地域別価格」だ。
地域別価格では、物価や賃金水準、消費動向などをもとに、国内を「超都心」「都市部」「地方都市」「九州山口」という4つのエリアに区分。地域の購買力にあった形での価格設定を行っている。金谷社長は「お客さまからは非常に好評で、特に地方において売り上げが伸びた」と話す。
これに合わせて、同社は2024年11月に、クーポン施策の改善を行っている。
これまで同社が公式アプリで提供してきたクーポンは、システムの制約上、割引後の価格を同一としていた。例えば、「超都心」では620円、九州では520円で提供してきたミートドリアでも、割引後の価格は全て500円としていた。このため、「あまり値引きする必要のない都市部の値引き幅が大きくなり、価格感度の高い地方ほど、値引き幅が少なくなってしまう」点が課題だったという。
こうした課題に対し、同社は2024年の11月、新たなアプリクーポン「ダイナミッククーポン」を導入した。それぞれのメニューに対し、「70円引き」など、割引額を一律にした値引きクーポンを配信するというものだ。
金谷社長は「今後は4区分ではなく『都道府県ごと』や、不振店・繁盛店といった状況に合わせた『店舗ごと』のクーポンを実装していきたい」とコメントした。ニーズや地域の購買力に合わせたプライシングを強化することで、さらなる客数増につなげる狙いだ。
2025年には、グループ全体で439億円の売り上げ増を見込むすかいらーくHD。公式アプリの会員数も伸長を続けており、2024年末の時点で1158万人に達している。購買力を分析して打ち出す価格設定・メニュー展開施策は、今後も奏功するか。
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