入社3年以内の若手が辞める「3つの症例」 アサヒ飲料「2年目リフレクション研修」の威力:Z世代の若手社員の離職を防ぐマネジメント(2/2 ページ)
社歴「1〜3年目」におけるオンボーディングのポイントを解説するとともに、アサヒ飲料の「2年目リフレクション研修」を紹介していきたい。
アサヒ飲料「2年目リフレクション研修」とは?
ここからは、アサヒ飲料がスタートアップ期の新入社員を対象に実施している「2年目リフレクション研修」を紹介したい。
アサヒ飲料では、新入社員が2年目になる際、1年目にフォローしてくれたブラザーシスターが離れる。それにより「今の状態で独り立ちできるのか……」という不安を抱え、「Power不足」を感じている新入社員が少なくなかった。2年目リフレクション研修は、こうした新入社員を、できないことばかりに目を向けるのではなく、自分でモチベーションを立て直すことができる状態へと導くための研修である。
具体的な施策
(1)モチベーション曲線を作成する
新入社員は特に、個人人格におけるモチベーションの低下が、組織人格における役割演技力の低下につながりやすい。スタートアップ期に大切なのは、モチベーションが上下する原因を知ることだ。そのために、新入社員には図のような「モチベーション曲線」を作成してもらう。これは、入社時から現在までの自分自身のモチベーションの変動を曲線で可視化するものだ。モチベーション曲線を作成することで、自分がどのようなときにモチベーションが上がるのか・下がるのかを把握できる。
(2)コントロールできる・できない領域を理解する
米国の精神科医ウィリアム・グラッサー博士が唱えた「選択理論心理学」の考え方をベースに、「変えられるもの」と「変えられないもの」を分けて捉えることを学ぶ。人はつい「変えられないもの」に囚(とら)われてしまうが、「変えられるもの」にエネルギーを集中させることが、自分自身をコントロールする第一歩になる。
(3)思考を切り替える方法を習得する
モチベーションが下がっているときは、自分自身の「思考」を切り替えるのが有効である。そのために、「スイッチ&フォーカス」のテクニックを学ぶ。このテクニックは、客観的な視点から現状を捉え、変えることのできる自分自身の「思考」に焦点を合わせる。そのうえで、自分自身の「行動」を切り替えていくのだ。
- タイムスイッチ
「時間」を短期⇔長期、過去⇔未来と切り替えることによって思考を切り替える。
- ズームスイッチ
「視界」を低⇔高、狭⇔広と切り替えることによって思考を切り替える。
- ゴールフォーカス
「ゴール」に立ち返り、目的視点から現状を見る。
- チャンスフォーカス
隠れている「チャンス」に目を向け、チャンスの視点から現状を見る。
- リスクフォーカス
奥に潜んでいる「リスク」を把握し、リスクの視点から現状を見る。
(4)上司からの手紙を渡す
上司に手紙を書いてもらい、それを渡すことで新入社員に「期待」を伝える。これには、前述の「仕事の評価ポイントの多様化」と「仕事の意義付け」が直結してくる。面と向かって話しにくいことを伝えたいとき、手紙という形式は効果的だ。手紙には書き手の人格がよく表れる。また、組織人格だけではなく個人人格にも目を向けてもらいやすいので、手紙を読んだ新入社員は「全人格的にサポートを受けている感覚」を得られる。
成果
2年目リフレクション研修を受講した新入社員からは、次のような感想が寄せられた。
「周りがどんな壁にぶつかっているのか、どのような思いで仕事に取り組んでいるのかを知ることができ、悩んでいるのは自分だけではないと安心できた。」
「変えられないことに気を取られ過ぎている自分にあらためて気付くことができた」
「上司からの手紙を読んで、今後も頑張ろうと思えた」
「MVP体験」を意識したオンボーディング
入社1〜3年目の新入社員に対しては、ぜひ「MVP体験」を意識したオンボーディングを実践していただきたい。「できた → 褒められた → 面白い」のサイクルを繰り返すことで、スタートアップ期の離職を減らすことができるだろう。次回は、入社3〜5年目の若手社員が辞める3つのパターンとオンボーディングのポイントをお伝えしたい。
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