サンリオ時価総額は1000億円超消失……「クロミ著作権」今後の展開は 企業が再認識すべき“知財リスク”:古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
サンリオの人気キャラクター「クロミ」を巡って著作権トラブルが起きている。争点はどこにあり、今後の展開はどうなっていくのか。企業が再認識するべき知財リスクの観点から解説する。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Xはこちら
ハローキティなどのキャラクターで知られるサンリオは2月25日、自社の人気キャラクター「クロミ」に関して、アニメ制作会社のスタジオコメットと著作権トラブルが起きていることを認めた。
報道に伴い株価は7025円から6405円まで下落し、時価総額にして1000億円以上が吹き飛ぶ事態にまでなっている。トラブルの争点はどこにあり、今後の展開はどうなっていくのか。企業が再認識するべき知財リスクの観点から解説する。
クロミ“誕生の経緯”を巡ってトラブルに……争点は
騒動の渦中にいるクロミは、2005年から放送されたテレビアニメ『おねがいマイメロディ』で初登場したキャラクターだ。
マイメロディのライバルとして存在感を強め、近年はいわゆる「地雷系」のファッションアイコンとしても若い女性を中心に人気を集めている。サンリオ恒例のキャラクター人気投票でもクロミはランキング上位の常連となっており、直近の得票数は412万票だった。マイメロディの272万票をはるかに凌ぐ。
実はこのクロミ、いわゆる「アニオリ」キャラであり、通常のキャラとは出自が異なるとしてファンの間では有名だった。
「アニオリ」キャラとは、アニメオリジナルキャラクターの略で、原作漫画や小説には登場せず、アニメ制作の過程で独自に追加されたキャラクターを指す。ストーリーの補完やアニメ独自の展開を作るために登場することが多く、著作権の帰属が制作会社にある場合もある。
アニメを制作したスタジオコメットは、クロミをデザインしたのはサンリオ側のデザイナーではなく、このアニメ制作時に所属していたアニメーターである宮川知子氏であると主張しており、それが今回のトラブルにつながったわけだ。
スタジオコメット側の文書によれば、今後、著作権および著作者人格権の侵害について正式に訴訟提起に至ると見られる。
今回は、損害賠償や使用差し止めといった名目ではないため、サンリオ側が直接的な金銭的損失を被る可能性は低い。しかしある種の”夢”を見せてくれるキャラクタービジネスにおいて「権利トラブル」という”現実”を見せつけられてしまうと、ファンの熱量にも影響が出かねない。
実際に、サンリオの株価は7025円から6405円まで下落し、時価総額にして1000億円以上が吹き飛んだ。問題の早期決着が図られなければ間接的であっても大きな損失として降りかかってしまうだろう。
一方、サンリオ側は「クロミ」の著作権については、これが関連する契約によって明確にサンリオ側に帰属しており、著作者人格権についても適切に処理されていると反論している。
本件は、アニメ制作においてキャラクターのデザインがどのように扱われるべきか、またその権利が誰に帰属するのかといった問題として、業界内外にとって大きな関心事となりつつある。
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