東海地方の雄・バロー、スーパー激戦区の関東に進出へ 「十分に勝算あり」と言えるワケ:小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)
東海地方を本拠地とするスーパーのバローが着実に存在感を増している。その成功の背景にはどんな戦略があるのか……。
バローが関東進出で狙うのは?
2025年、バローは関東進出について言及した。まだどこに出すかまでは明らかになっていないが、未出店地で店舗用地募集の地域に入っているのは神奈川県だ。
このニュースが報じられたとき、ネット上では、競争の激しい関東に乗り込んで大丈夫なのかと心配する声が多く聞かれた。しかし、首都圏の中でも神奈川県というのは、足掛かりとしては良い場所かもしれないと筆者は考えている。バローは物流効率を重視する企業だ。神奈川県の西部から物流網を拡張していきやすいことに加え、有力スーパーの店舗網がやや手薄な地域でもあるからだ。
図表5は関東地盤の有力スーパーの都県別の店舗数を抽出したものだ。神奈川県は東京に近接する北東寄りに横浜市、川崎市、相模原市という3つの政令指定都市がある。神奈川県の全人口約920万人のうち、600万人が住んでいる。
神奈川県に昔から出店しているスーパーはこの3市を中心に店舗網を構築しており、いわば主戦場である。そのため、総合スーパーやライフ、サミットやマルエツ(イオンUSMH)、オーケーなどの大手スーパーはこの3市に集中しており、西部は明らかに少ない。
また、関東郊外で強いと評判の埼玉県勢(ヤオコー、ベルク、マミーマート)に関しては、神奈川への進出は最近であり、まだ店舗を見かけること自体がまれである。湘南出身のロピア、町田出身の三和、マックスバリュ東海(イオン)が十数店舗を置いてはいるが、その程度だ。
そんな神奈川県の西部(政令指定都市以外)には、約320万人が暮らしている。バローが滋賀県や京阪地域で、売り上げ750億円を確保したことを考えれば、同様の展開は十分に可能だろう。
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