入社3〜5年目の若手が辞める「3つの症例」 鹿島建設「アイカンパニー研修」とは?:Z世代の若手社員の離職を防ぐマネジメント(1/2 ページ)
入社3〜5年目の若手の離職防止を図るためには? 鹿島建設「アイカンパニー研修」などからヒントを探る。
「このまま、この会社で仕事を続けて大丈夫だろうか……」「仕事が面白いと思えなくなってしまった……」
入社3〜5年目の若手社員は仕事や職場に慣れてきて、評価されることも増え、それなりの貢献実感を得られるようになっている。一方で、仕事そのものに不満があるわけではないものの、なぜだか今までより「仕事が面白くない……」と感じるようになってくる。その結果、離職に至るパターンも少なくない。
冒頭のような若手社員をロケットに例えると、重力圏を突破して宇宙空間にたどり着いたものの、さまざまな「引力」の影響を受けてフラフラしている状態である。こうした状態から、筆者は入社3〜5年目を「ペースメーク期」と定義している。ペースメーク期の若手社員の離職防止を図るためには、以下の3つの「引力」の存在を認識しておかなければいけない。
入社3〜5年目(ペースメーク期)の特徴とは?
Private(個人のライフスタイル)引力
個人のライフスタイル(Private)が変化することによって生まれる引力である。ペースメーク期になると、一人暮らしを始めたり、恋人ができたりと、プライベートの状況も入社時とは変わりやすい。こうした変化がきっかけとなり、働き方を考え直す若手社員は少なくない。
一人暮らしを始めれば、生活費を見直すようになるだろう。恋人ができれば、将来設計を描くようになるだろう。プライベートに変化があったとき、「このまま、この会社で働いていて大丈夫なのか?」と、将来への不安を覚えるのは自然なことである。しかし、この状態が続くと、若手社員はPrivate引力に引っ張られて離職してしまう。
Recruiting(他社の採用活動)引力
他社の採用活動(Recruiting)を見聞きすることによって生まれる引力である。ペースメーク期になると、仕事はある程度落ち着いてくる。一方で、仕事が充実している友人や、年収が上がった友人の話を聞いて、「うらやましいな……」と感じることも増えてくる。いわゆる「隣の芝生が青く見えている」状態だ。今の仕事に不満があるわけではないものの、他社が輝いて見え、より魅力的な環境を求める気持ちが湧いてくる。
若手社員から直接「A社はこのくらいの給料なのに、どうしてうちの会社は......」などと愚痴をこぼされることもあるだろう。このように他社と待遇を比べている若手社員は、求人情報に触れている証拠である。本格的に転職活動を始めると、こうした話は口にしなくなる。そして、ある日突然、退職宣言を受けるのだ。
One-pattern(マンネリ)引力
今の仕事にマンネリ(One-pattern)を感じ始めることで生まれる引力である。ペースメーク期になると、おおよその仕事は一周し、仕事の習熟度も高まっている。上司が「まだまだ成長の余地がある」と考えていても、若手社員自身は「もうこの会社で学ぶことはない」と感じることもあり、同じペースで同じ仕事を続けていくことに疑問を覚えるようになる。
マンネリを訴えてきた若手社員は、「もっと面白い仕事がしたい」と思っているわけではなく、「このままでは自分のキャリアが危ない……」と感じている可能性が高い。このような食い違いを埋めることができないと、若手社員はやがて離職を決断するだろう。
3つの引力への対応策とは?
会社や上司が直接的に3つの引力をコントロールするのは難しい。会社や上司にできることは、引力に引っ張られすぎないように導くことだ。
ペースメーク期は、もはや見習いの時期ではない。見習いマインドから脱却させ、組織の一員として「プロフェッショナル」になってもらう必要がある。筆者は「Private引力」「Recruiting引力」「One-pattern引力」の頭文字から「PRO化」と呼んでいる。
若手社員のPRO化を促すため、上司に心掛けていただきたいのが以下の3点だ。
評価を客観視させる
成長しているのに「まだまだ力が足りない」と自分を卑下している若手社員もいれば、成長の余地があるのに「もう学べることはない」と慢心している若手社員もいる。
このような場合、上司は若手社員に「自己認知と他者認知のギャップ」を示し、改善点を認識してもらう必要がある。そのために効果的なのが「360度サーベイ」だ。一人の上司の評価は、その上司の主観に左右されるため、どうしても若手社員の納得感は低くなる。しかし、360度サーベイを使って周囲の意見を伝えれば、自分のことを客観視しやすくなる。
スキルの棚卸しをする
毎日、同じ業務に向き合っていると「このまま、今の仕事を続けていても別部署や他社では通用しないのではないか……」といった焦りを覚えることがある。そんなとき、スキルの棚卸しをしてみると、意外と他の仕事でも通用するスキルが身に付いていることに気付くものだ。
プロフェッショナルとして自信を持ってもらうためには、若手社員に自分の市場価値を認識してもらうことが重要だ。加えて、会社で習得できるスキルを明示してあげれば、将来に向けた市場価値の高め方も見えてくるだろう。
責任ある仕事を任せる
人が成長するためには、成功体験だけでなく失敗体験も重要である。若手社員のプロフェッショナル化を促すためには、多少背伸びしなければ完遂できないような、責任ある仕事を任せることが重要だ。ある程度自信を付け、少々慢心しているタイミングで責任ある仕事を任せたい。
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