アプリを開くたびに「推し」に会える喜び モバイルVカードが生み出す「好き」の経済圏:「ポイント経済圏」定点観測(5/5 ページ)
モバイルVカードを好きなデザインに着せ替えできる「Vキセカエ」。人気アニメやスポーツチームなどのデザインが選べるという一見地味なサービスだが、その裏にはポイント利用の根本的な変革を目指す戦略があった。
デジタルとリアルを融合する
「アプリだけに留めるつもりはない」と撫養氏は今後の展開についても意欲を見せる。「特別なサービス、企画を合わせて提供していきたい」というのだ。
「例えば、着せ替えの新しいコンテンツをリリースするタイミングで、SHIBUYA TSUTAYAでリアルでもイベントを実施する」と撫養氏は具体例を挙げる。「着せ替えを持った状態で渋谷のお店に行ってもらったら、こんなサービスが受けられる」といった特典を考えているという。買った人限定のクローズドイベントや優先的に入場できる権利なども検討されている。
長らくポイントサービスは「還元率」や「提携店舗数」といった経済的メリットを競い合ってきた。しかしCCCは「情緒的価値」に着目し、1983年から培ってきたエンターテインメント事業のノウハウを生かして、ポイントと「好き」を結びつける新たなエコシステムの構築に乗り出している。
単にポイントをためて使う経済的メリットだけでなく、アプリを開くたびに「好き」に会える喜びを提供するーー。そんな「感情価値を伴うポイント経済圏」への挑戦が始まっている。
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
3万円払っても欲しい? ATMでは使えないのに人気沸騰のメタルカード
JCBが2024年10月に発行した招待制カード「ザ・クラス」が注目を集めている。ATMでは利用できず、発行手数料も3万3000円と高額。それでも発行後わずか2カ月で想定を上回る申し込みがあるという。
三井住友カードのクレカ投信積立で“大改悪” 5大ポイント経済圏の最新動向
企業が発行するポイントが消費活動に欠かせないものになってきた。多くのユーザーが「ポイ活」にチカラを入れているようだが、企業側はどのような囲い込みを図っているのか。最新動向をまとめてみた。
コンビニポイント戦争勃発 セブンVS.ローソン、業界の勢力図はどうなる?
クレジットカード会社と通信大手による新たなポイント経済圏競争が激化している。大手コンビニチェーンを巻き込むことで、未来はどうなる?
王者楽天ポイントに迫れるか? 新生Vポイントの“勝算”
CCCマーケティングが運営するTポイントと、SMBCグループが運営するVポイントが統合し、新生Vポイントが誕生した。企業発行ポイントの市場規模は2.5兆円を超えているが、新生Vポイントの勝算はどこにあるのか。
