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「本田圭佑率いるファンド」が出資 がんの検査キットを開発したCraifの実力(2/2 ページ)

本田圭佑が運営するファンドX&KSKは、がんの早期発見が可能な検査キットなどを開発しているスタートアップCraifに出資した。Craifの共同創業者である小野瀨隆一CEOに、これまでの道のりを聞いた。

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資金繰りの苦労 キャッシュアウト2週間前まで

 創業当初の資金繰りについては「とても大変で、シリーズAの時は、キャッシュアウト2週間前くらいまで行きました」と話す。ちなみにCraifは、ランウェイ(資金を使い切るまでの期間)をSlackで社員に公開するというオープンな社風だ。

 「シリーズAのリードが、大和企業投資さんだったのですが、投信会は1つのプロジェクトに対して2回あって、2回目の投信会は落ちないのが普通です。投資委員は6人いるのですが、3対3で割れてしまい、史上初めて、落ちてしまいました」

 そこで、反対した3人に個別面談をすぐに申し込み、あらためて事業内容を説明。最終的には賛成に変更したことで、同社は生き延びたのだ。

 その後、製薬会社や食品会社が、Craifが持つ技術を使って製品開発をするなどしたため、創業して2、3年後には2億円〜3億円の売上高を出せるようになったという。「小売だけでなく、共同研究型でも収益も上げられる点については投資家に評価されました」

価値ある商品だと認識してもらう

 マイシグナルシリーズでは、最大7種類のがんリスクをステージ1から検出できる「マイシグナル・スキャン」が最も高く、価格は6万9300円。がんという命に関わる病気なので、その程度の価値があるのは理解できる。だが、賃上げが物価上昇のスピードに追い付かない日本では高額かもしれない。

 「そこは、皆さんおっしゃいますね(苦笑)。日本での、がん保険の加入率は50パーセント以上で、がん保険を中心に年間平均約37万円を費やしています(生命保険文化センター「令和元年度生活保障に関する調査」「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」)。がん保険に入っても、がんは防げませんし、入院すれば働けなくなりますが、給与の保障はされません。マイシグナル・スキャンを夫婦2人で購入しても約14万円ですから費用対効果が良いかと思っています」

 全身のがんリスクが分かるが、がん種の特定ができない「マイシグナル・ライト」は2万円台だ。薬局では高額なスキャンの方が売れるという。

 約7万円は、業界内では安いといわれているとはいうものの、それは内情を知っているからだ。一般人は内情を知らない。このギャップをどう埋めるのか。「CMなどをやり、丁寧に情報を伝えることだと考えています。1日、2日でギャップが埋まるようなものではないので、継続的な取り組みが大事だと思います。命に関係するので、がんリスクに対する認識をあらためてもらえれば、絶対に使っていただけると信じています」

 解決のカギになるのは、医者から患者への情報の伝達だ。「北海道と東海で重点的にやっていますが、医療機関との連携は重要視しています。すでに800の医療機関で導入しており、その数を増やしていきたいです」

 東海と北海道を重点的に取り組む理由は、東海にある名古屋大学発のベンチャー企業であることとと、北海道でCraifと共同研究を実施していた大学病院の先生とのつながりが多く、連携が取りやすいためだ。

 北海道の岩内町での取り組みもユニークだ。「北海道は広大ゆえに医療アクセス面で課題があります。岩内町の肺がん検診の受診率は約6%ほどです。そこの解決にも役立ちたいという思いから100人にマイシグナル・スキャンを無償提供しました。結果、1人は肺がんが疑われ手術をし、ステージ0の超早期がんを切除することができました」。これらの活動によりマイシグナルの知名度向上にもつながった。がんの早期発見にもつながれば、非常に意義深い。

過去の経験を生かせるか?

 小野瀨CEOが4年ほど働いた三菱商事では、船舶部に配属され、天然ガスを船で運んでいたという。

 「ガスをマイナス160度に冷やすと体積が600分の1の液体になります。私以外の社員はみんな技術者という会社に、出向していました。Craif創業からの約4年間も、私以外の社員はほとんど研究者でした」

 技術者はいい意味でとがった性格の人が少なくない。技術者のマネジメントをしてきたことは、小野瀨CEOにとって大きな経験だった。これまでの資金繰りの経験からも、倒産の危機を乗りこえた粘り強さもうかがえる。

 これらの経験を生かして着実に事業を進められれば、マイシグナルシリーズが、がんリスクを検出できる検査キットとして広まる可能性がある。

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