3年で「1万1000時間」の業務削減 創業103年の老舗メーカー、製造業特有の「DXの壁」をどう乗り越えた?:売り上げも25%増(2/3 ページ)
製造業のDXは進みにくい──。そんな話を聞いたことがある人も、少なくないだろう。専門性の高い業務特性、それゆえに属人化しやすい組織構造、ITリテラシーの高い人材の不足など、さまざまな要因がその背景にあると言われている。
3年間で勤務時間1万1000時間の削減、売り上げ25%増の成果
データの可視化により、TVEではさまざまな意思決定がデータに基づいて行われるようになった。
「数値データで進捗状況を把握できるので、進捗が遅れている地域やクライアントに対してアプローチするなど、優先順位を立てやすくなりました」と石丸氏は説明する。
また、BIツールでは、数値だけでなく商談時の情報も登録できる。以前は個人やチーム内でしか共有されなかった情報も、BIツールに入力することで全社に共有可能となり、それが営業活動にもいきているという。
「現在は、全ての案件のデータと情報が可視化され、経営陣を含む全社で共有しています。例えば『このくらいの採算性の案件が、この時期に予定されている』『A社の担当者によると、新しい発電所をつくる計画があるらしい』といった情報が見えるようになり、事業計画の精度が向上しました」
TVEがBIツールを導入してから、3年が経った。この3年間で、メンバーのBIツールへのログイン数は62%増加し(約1500回の増加)、勤務時間は15%減少した(約1万1000時間の削減)。また、営業部員の努力もあり、売り上げは25%も増加したという。
まず、勤務時間の減少について石丸氏は、「以前は数字の把握や報告、情報共有のための資料作成に莫大な時間がかかっていました。今ではリアルタイムでデータを確認できるため、それらの作業が不要になり、大幅な時間削減につながったのです」と、BIツール導入による効率を説明した。
「BIツール導入を検討し始めた理由は、データの可視化だとお話しましたよね。実はもう一つ、当時抱えていた重要な課題があって。営業部門の中で、資料作成や報告業務を担当してくれていたスタッフが、不足していたんです。担当のスタッフがいないなら、新しく採用するか、今いるスタッフで乗り切るしかありません」
新しいスタッフを採用するには、時間もコストもかかる。今いるメンバーでなんとかできないかと模索した結果も、BIツールの導入につながっているのだ。
売り上げが25%増加した点について、BIツール導入の直接的な影響は判断できないと石丸氏。売り上げをけん引した大きな要因としては、原子力発電所の再稼働という業界動向が関係しているという。
「震災後に停止していた原子力発電所が次々と再稼働し始め、それに伴う点検業務が増加しました。売り上げ増の背景自体に、BIツールの活用はあまり関係ありません。しかし、BIツールを導入して業務が効率化できていたからこそ、急な案件増加にも対応できたんです」
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