にじさんじ・ホロライブの市場評価が急回復……鍵は「Vtuber軸」からの脱却?(2/3 ページ)
かつてはホロライブが海外人気などで優勢とみられる場面もあったが、現状ではANYCOLORが収益構造の安定性や拡張性において一歩先を行っている。両社の最新決算を検証し、VTuber業界の今後を探る。
にじさんじとホロライブ、差が開いた理由
まずはANYCOLORの業績から確認しよう。当3四半期累計(非連結)の売上高は289億497万円(前年同期比24.2%増)、営業利益は109億6568万円(同21.3%増)、純利益は75億8225万円(同20.9%増)と2桁の増収増益となった。
ライブ配信やイベント、プロモーションといった既存領域は堅調を維持しつつも、グッズやデジタルアイテム販売(コマース領域)の拡大が収益を大きく後押ししている。
所属VTuber数は165人となり、自社エコノミーへの窓口であるANYCOLOR IDも前年同期比30%増の155万件と増加。法人案件を含むプロモーション分野の伸びが好決算に寄与した。
一方、カバーの第3四半期累計決算は売上高288億6300万円(前年同期比50.1%増)と高水準で、営業利益55億4400万円(同58.8%増)、純利益37億7700万円(同43.9%増)という大幅増収増益決算で着地した。
ホロライブ所属VTuberによる国内外のライブコンサートが盛況を博し、マーチャンダイジング分野では『hololive OFFICIAL CARD GAME』の売れ行きが好調だった。TCG事業のヒットにより、前年同期比76.9%増の142億5800万円まで大きく伸びた他、ライセンス・タイアップという広告起用の分野でも40億円もの売上高を記録し、前年同期比で30%を超える高い成長率を記録している。
では、なぜ営業利益規模で両社に2倍近い差が生じているのか。ANYCOLORは、配信活動を原点としながらもグッズ販売や企業タイアップの費用対効果を高める戦略が奏功し、比較的安定した利益率を確保しているとみられる。
カバーは大型ライブやコンサート、TCGなど新規事業を拡充する過程で先行費用が膨らんでいる可能性があるものの、売上高の拡大余地は大きく、事業展開を加速している段階と推察できる。
利益水準だけで見れば一見カバーがにじさんじに大きく水を開けられているようにも思われる。実際のところは追い付け追い越せという具合で共存しながら高い成長を続けているとみるべきだろう。
中長期的には足元の増収増益率が高く、設備投資などに力を入れているカバーの方が、むしろ有利な状況が来る可能性もありうる。そのため、実は両者の実質的な差は見た目上の利益額よりも小さく、今後その差は縮まってくることが予想される。
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