亀田製菓と赤いきつねの“騒ぎ”はなぜ広がった? 企業を襲う「1%の誹謗中傷」と新法の限界:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
4月1日に施行された「情報流通プラットフォーム対処法」は、企業の危機管理対策に活用できる可能性がある。具体的には……。
1%の誹謗中傷から炎上騒ぎに
これは、2025年2月にアニメの描写が性的で不快だとして炎上した「赤いきつね」(東洋水産)のCMにも当てはまる。デジタル空間の分析を手掛けるTDAI Lab(東京都中央区)の福馬智生CEOが本件にまつわる約6000件のX投稿を調べたところ、このCMを「不快」だとした人はわずか1%にすぎなかったという。
実はこのとき、一部のメディアや専門家は東洋水産に対して「説明」を求めていた。これだけ世間を騒がせているのだから、社会的責任のある企業として何かしらの見解を出すべきだとご高説を垂れていた。
このように今の日本では、わずか1%の超マイノリティな投稿でも、バズりさえすれば「大多数の声」へと格上げされてしまう。ということは、この1%の投稿が偽情報やフェイクニュースでもバズりさえすれば簡単に「事実」になってしまうということでもあるのだ。
こうなってしまったらもはや手遅れなので、企業の危機管理担当者としては時間との勝負になる。つまり、「初期鎮火」が極めて大事なのだ。
そこで期待されるのが「情プラ法」だ。
先ほど述べたように、これまではリアルタイムで拡散している偽情報やフェイクニュースに対して、企業側は「なす術なし」だった。だが、この法律では、申請すると7日以内に通知が届くので「今拡散している情報」への対処とともに、企業側の見解をステークホルダーに伝えることができる。例えばこんな感じだ。
「現在、SNS上に弊社商品について、事実と異なる情報を掲載した投稿がありますが、プラットフォーマーに対して情報流通プラットフォーム対処法に基づく迅速な対応をお願いしているところです。プラットフォーマー側から通知があり次第、またご報告いたします」
これが「発信者情報開示請求」となると、非常に物々しい印象を与え、企業が個人に対して高圧的に「口封じ」を図っていると受け取られかねない。対して、これならばXやYouTubeという世界的企業を相手に「お願い」をしているので、それほど悪いイメージではないのだ。
もちろん、先ほども申し上げたように、これが本当に削除されるか否かという「実効性」はビミョーだ。プラットフォーマーによっては「対応しない」という回答があるかもしれない。
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