亀田製菓と赤いきつねの“騒ぎ”はなぜ広がった? 企業を襲う「1%の誹謗中傷」と新法の限界:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
4月1日に施行された「情報流通プラットフォーム対処法」は、企業の危機管理対策に活用できる可能性がある。具体的には……。
企業の危機管理で「情プラ法」がどう役立つか
ただ、危機管理の視点から重要なのは、実はそこではない。
繰り返しになるが、何か不祥事が起きた際に便乗して、偽情報やフェイクニュースが投稿されているその瞬間、企業側にできることはなかった。削除依頼や発信元開示請求などは時間がかかるので結局、「後の祭り」なのだ。
しかし、今回の法律によって「7日以内」で何かしらの結論が出るアクションができた。これに踏み切ることで、企業側としては「この投稿はまったくデタラメなんですよ」というメッセージを迅速に世に伝えられる。誤解や偽情報の拡散を食い止める「初動対応」がようやくできるのだ。
個人的には、これがこの法律の本当の意義ではないかと思っている。というのも、この法律をつくった政治家たちも、SNSでの誹謗中傷などに対して「初動対応」ができないことが悩みのタネだったからだ。
フジテレビのリアリティー番組に出演していた女性プロレスラーが、SNSでの誹謗中傷に苦しみ、自ら命を絶つという痛ましい事件があった。これをきっかけに、国の誹謗中傷対策が大きく進んだが、実はこれは政治家にとっても都合の良いタイミングだったのだ。
安倍晋三元首相の殺害事件、さらに裏金問題以降、自民党議員への風当たりはかなり強く、ネットやSNSではボロカスに叩かれた。それは野党も同じで、自民党支持者や保守系の人から同様に攻撃される。そこで政治家の中からも「誹謗中傷対策をすべき」という声が多く挙がっていた。
ただ、これは「言論の自由」に抵触するかなりセンシティブな問題だ。こっちは誹謗中傷で、あっちは批判的論評という線引きは正直、かなり難しい。イデオロギーや思想によって「正義」というのは、人によってさまざまだからだ。
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