「飲み放題」をやめたのに、なぜキリンシティの売上は伸びたのか:週末に「へえ」な話(2/4 ページ)
「飲み放題」をやめたところ、売り上げを伸ばした飲食店がある。ビアレストランの「キリンシティ」だ。売り上げだけでなく、客数も単価も伸びたわけだが、その理由は……。
社内からは「反対」の声
「いやいや、ちょっと大げさでしょ。そんな大きな話ではないし」などと思われたかもしれないが、キリンシティにとって飲み放題の売り上げは全体の10%ほどを占めていた。ということもあって、廃止するかどうか議論したとき、社内からは「反対」の声が飛び交った。
そもそも、なぜ「飲み放題をやめよう」という話になったのか。「どこでも気軽にお酒を飲める時代だからこそ、『あの店で、あの人と、特別な時間を過ごしたい』と感じられる場を提供することに、価値があるのではないか。また、キリングループが提唱する『適正飲酒』の考え方も、この決断を後押ししました」(同社の波多野潤社長)
社内で議論を重ねた結果、飲み放題をやめたわけだが、当然、売り上げの減少が見込まれる。大人数の宴会も少なくなる、客数の減少も考えられる。こうした懸念に対して、キリンシティはどんな手を打ったのか。
「宴会の騒がしさが苦手で、これまでキリンシティを避けていた」――そんな層をターゲットのひとつとして考えた。ノンアルコールや低アルコールを増やしただけでなく、少人数でも注文しやすいようなメニューも追加。その結果、ファミリー層が来店し、アルコール中心ではなく、料理も楽しむ人が増えていったのだ。
こうした変化はデータにも表れており、特にノンアルコールや低アルコールの注文が伸びている。飲料全体の数字を見ると、2023年2月は7.6%だったが、2025年2月には10.6%に上昇。また、料理の注文数が増え、フードの売り上げ比率は52%に達し、ドリンクの48%を上回ったそうだ。
飲み放題の廃止とともに、スタッフの「接客」も見直した。2022年にタブレット端末を導入し、お客は席から注文できるようになった。いまでは多くの店がこのスタイルを導入しているが、そのメリットのひとつに、スタッフの負担軽減がある。
「はい、何にしましょう? ビールと枝豆ですね。あとは?」といったやりとりがなくなったことで、スタッフはお客との会話により注力できるようになった。結果、顧客満足度を示すNPS(ネットプロモータースコア)は、2022年から2024年にかけて、約5ポイント改善したそうだ。
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