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【事例で解説】一斤「3000円」のオーガニック食パンを売る方法 5秒・18秒・58秒の自己紹介で差をつける(3/3 ページ)

一年前にパン屋を開業した「超ナチュラルオーガニック食パン」を一斤3000円で売り出しましたが、売り上げが伸びません。売り上げを向上させるために、これまで「お客さまのニーズ」「超ナチュラルオーガニック食パンのリソース」を言語化してきました。後編では、「検討と分析」のポイントを紹介します。

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「5秒」「18秒」「58秒」 3つのフレームワークで自己紹介

 最後に、五十鈴さんは3つのフレームに落とし込むことにしました。自己紹介の3つのフレームは「5秒間の自己紹介」「18秒間の自己紹介」「58秒間の自己紹介」でした。

5秒間の「超ナチュラルオーガニック食パン」紹介

 日曜の、とっておきの朝に食べてほしい。そんな思いを込めて、私たちは、このパンを作りました。

18秒間の「超ナチュラルオーガニック食パン」紹介

 仕事。家庭生活。プライベート。いろいろあったひと月をよく乗りきりましたね。そんながんばったみなさんに、日曜の朝だけはほっとしてほしい。そんな思いで作ったパンです。店主のまごころはもちろん、小麦や酵母、バターや砂糖の生産農家のみなさんの誠心誠意が、ふっくらと焼き上がっています。誰も経験したことのない、とっておきです。

58秒間の「超ナチュラルオーガニック食パン」紹介

 食べたお客さまはみなさん、おいしいというより感動ですね、と言ってくださいます。最初は息子を喜ばせたい一心で始めたパンづくりですが、多くの仲間と家族の協力に支えられて、ついにこの味へと、たどりつくことができました。一番味わっていただきたいのは、仕事、家庭生活、プライベート……全部がんばったみなさんです。だけど、がんばれなかったみなさんにも、日曜の朝だけは、こころも体もほっとしてほしい。そんな思いで素材を選び、生地を練り、窯の炎を見つめました。

 店主のまごころはもちろん、小麦や酵母、バターや砂糖の生産農家のみなさんの誠心誠意がこの一斤に込められています。誰も、どこでも経験したことのない、とっておきのパンです。

 という3つのフレームを考えました。これを考えておけば、店内のPOPやチラシ、あるいはWebページを作成する際に、お客さまに対し、一貫したアプローチをとることができます。

 バスケットも考えておきましょう。バスケットの役割とは「コミュニケーションをとる準備ができていますよ」と相手に意思表示することでした。 「超ナチュラルオーガニック食パン」なら、お客さまにどんなバスケットを広げるでしょうか?

バスケット

 相手を好きになり、コミュニケーションを交わしたいと願い、そして何か役に立てることはないか、役に立ちたいなあと考え、まず自分から胸襟を開けることを「バスケットを差し出す」といいます。バスケットとはカゴのこと。まず自分が空のバスケットを相手に差し出して「受け入れる用意がありますよ」と意思表示するのです。

 本書冒頭で私は「はじめまして」と述べました。目指したい自己紹介では「こんにちは」が皮切りの言葉でした。これがバスケットです。


 やっぱり「おはようございます!」だろう、と五十鈴さんは考えました。

 でも、これだけではお客さまに「面白そう」と思わせることはできないかもしれません。そこで「!」の部分をロゴやイラストに置き換えてみることにしました。しかしプロのすばらしいイラストでは「手づくり」感や誠意が、お客さまに伝わりづらいのではないだろうか。そう考えた五十鈴さんは「超ナチュラルオーガニック食パン」の似顔絵を息子に描かせて、それをロゴのように用いることにしました。息子は、なんとも味わいのある、ほほえましいイラストを描いてくれました。

筆者プロフィール:日野眞明  MORE経営コンサルティング 代表取締役

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名古屋商科大学大学院客員教授。愛知県生まれ。年間宿泊出張を100泊近くする“移動の達人”。

中央大学経済学部国際経済学科卒業後、イトーヨーカ堂を経て、名古屋商科大学大学院経営情報学研究科修了、MBA。

“商売繁盛 ”を応援することが大好きなマーケティング経営コンサルタント。著書には「ふせん1枚から始める『事業計画』」「脳を揺さぶるマーケティング読本」がある。


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