【事例で解説】一斤「3000円」のオーガニック食パンを売る方法 5秒・18秒・58秒の自己紹介で差をつける(2/3 ページ)
一年前にパン屋を開業した「超ナチュラルオーガニック食パン」を一斤3000円で売り出しましたが、売り上げが伸びません。売り上げを向上させるために、これまで「お客さまのニーズ」「超ナチュラルオーガニック食パンのリソース」を言語化してきました。後編では、「検討と分析」のポイントを紹介します。
「円グラフ」を作って商品紹介を考えてみる
さて、ここでもう一度、自己紹介トレーニングを思い出してください。自己紹介トレーニングでは、アウトプットの目的を(相手/お客さまに)理解させ、納得させ、行動させる──ことだと紹介しました。そのためには、何が言いたいのかぱっと分かるように、主張を4つの部分に分けることが大切だと述べました。ここでも、あの時のやり方を応用してみましょう。
- 導入
一般的には、名前や仕事、年齢や住んでいる場所など、相手があなたを理解するために基礎となるデータを述べます。
- テーマ
お客さまに対して主張したいことを述べます。
- アピール
商品の長所、自慢したいことを述べます。
- まとめ
全体をまとめるのではなく、 「テーマ」や「アピール」でとくに念押ししたいポイントを述べます。
それでは、円グラフにしていきましょう。
この円グラフが、 「超ナチュラルオーガニック食パン」を売り出すための基本的な考え方となります。広告宣伝はもとより、値付けや販売方法も、この考え方をもとに発想していくようにしましょう。ここから「相手(お客さま)に面白そうと思わせる四大要素」である「論理」「ストーリー 」「ドキドキ」「信頼」を満たすような手段を考えていきましょう。
顧客との距離を縮める「アイスブレイク」とは?
通常なら、さらに理屈を考えたり、戦略を練ったりするかもしれません。しかし、ここまでの作業で、理屈やストーリーは十分に練られています。そこで次は、お客さまとの距離を縮めるアイスブレイクをまず考えてみましょう。
アイスブレイクは「こんにちは」「はじめまして」のようなものでした。では、商品が発する「こんにちは」「はじめまして」はどんなものか? ちょっとむずかしそうですね。
ここで大切なのは直感です。ステップ1で集めたさまざまな情報やステップ2で組み立てた理屈の中から、ふと目にとまった変わった出来事、面白い発想に注目してみてください。
例えば、五十鈴さんは同級生が言った「ゆったりした日曜の朝に食べたい味だわ」という一言を思い出しました。そういえばと、五十鈴さんは再調査をした際に、月に一度、日曜の朝に特売日を設けているパン屋があり、近隣の人たちが楽しみにしているという証言があったはずです。彼女はここから、2つのアウトプットがひらめきました。
1つは「超ナチュラルオーガニック食パン」のキャッチコピーです。「日曜の朝にだけ食べてほしいとっておきのパン」なんていいかもしれません。
もう1つは特売日の設定です。パンは焼き立てが一番おいしいはずです。そこで「超ナチュラルオーガニック食パン」の発売日を月に一度、日曜の朝だけに限定してはどうだろうかと考えたのです。家に持ち帰ってすぐに食べてもらえば、お客さまにこのパンのおいしさを120%受け止めてもらえるのではないだろうか。そして、日曜の朝が楽しみになれば、「ドキドキ」も満たすことができる。さらに月に一度なら、値段が高くても納得してもらえるのではないか、と五十鈴さんは思いました。
次に考えたのは雰囲気づくりでした。
これまでは、オーガニックパンに対する自分自身の熱い思いを前面に打ち出し、食の安全安心に対する意識の向上を啓蒙するような張り紙を壁一面に貼っていました。ナショナルブランドのパンをこきおろすような文面のチラシまでありました。
しかし、作成した円グラフから考えてみると、批判や啓蒙ではなく、楽しみや喜びといった点を強調した雰囲気をパンに漂わせることが必要だと考えました。
そこで商品名や包装から始まり、店内の内装についても再検討してみることにしました。再検討にあたっては、自分だけで考えるのではなく、夫や息子、同業の仲間、生産農家から、意見を聞いたり、サポートを求めたり、その分野にくわしい人物を紹介してもらうように心掛けました。というのは、自分一人で決めていくと、どうしても従来のこだわりが前に出てしまうと考えたからです。
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