人材難にあえぐ中小企業、どう戦うべき? 「年収上限」「諸手当」について考える:人材獲得 大競争時代(2/2 ページ)
中小企業は社外の人材にいかに賃金を提示しているのか。転職者のデータ分析や、採用に成功した企業の事例を通じて、明らかにしていく。
「手当」で支給額の上乗せを図る企業も
転職エージェントとして企業と対話していると、賃金に対するさまざまな施策を耳にしますが、「手当」を整備する企業も多数あります。例えば「物価上昇手当」「調整手当」「住居手当」など、さまざまな名称で手当を新設する動きがあります。
こうした「手当」を、新規採用者に適用するケースも見られます。市場価値が高い人材を獲得するためには魅力的な賃金を示す必要がありますが、既存の賃金テーブルには当てはめられないことも多いものです。そこで、既存社員の賃金とのバランス調整に工夫を凝らしているのです。労働市場の変化に対応するため、報酬制度を刷新するには、時間がかかります。そこで、「手当」の名目で支給することにより、スピーディーに市場の報酬相場との調整を図っているのです。
ただ、中長期的には、賃金テーブルの見直しのほか、財源となる利益の確保が必要となるでしょう。
これまで本連載では、企業にとって重要な取り組みとして、「業界や社外の賃金水準の把握」「社内外の状況に応じた定期的な賃金・報酬水準の見直し」「ITを活用した生産性の向上」などを挙げてきました。これらは当然ながら中小企業にも共通して必要な施策であり、人材の定着や採用をめぐる課題の改善につながる可能性があります。
利益を確保し、賃金を上げ、人材の獲得や社員のモチベーションアップを実現――というサイクルを生み出すために、さらなる生産性の向上や、大胆なビジネスモデルの変革が重要です。それを推進できる人材が社内にいないのであれば、外部から迎えることを検討してもいいでしょう。
社内で登用するにせよ、外部から採用するにせよ、自社の成長につながる施策を推進できる人材に対しては、その仕事の価値の大きさにふさわしい賃金を示していくことが求められています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
年収1000万円オファーも辞退……苦しい専門人材採用、潮目を変えた“経営層の決断”とは?
転職する理由として最多を占めるのは「給与を高めるため」。希望する人材を獲得するために、高額の報酬を用意する動きも出ている。従来の賃金水準から脱却した給与を提示することで、求める人材を採用できた大手事業会社の事例を紹介する。
なぜ、経営層が採用現場に出るべきなのか ハイキャリア層に響く「自社アピール」とは?
求職者から選ばれる企業が採用活動において、どのような取り組みを行っているのか解説する本連載。今回は、スタートアップの事例を通じて、採用を進めるためのノウハウを紹介する。
なぜあなたの企業に人材が集まらないのか 選ばれるための3つのポイント
人手不足が深刻化し、採用難が進む中、企業は人材確保に向けてどのような手を打てばいいのか。求職者に選ばれる企業の特徴とは――。さまざまな事例を通じて、採用がうまく進む企業の特徴を明らかにする。
米アマゾン週5出勤の衝撃 出社回帰でテレワークはどこへ?
コロナ禍でテレワークが推進されたにもかかわらず、出社回帰の動きが鮮明となっている。日本生産性本部が発表したテレワーク実施率は、2024年7月時点で16.3%。2020年5月調査時の31.5%と比較すると半分程度の数字にとどまっている。半数近くが出社に回帰した状況を、どう受け止めればよいのか。
優秀だが昇進できない人 採用時と入社後の「評価のズレ」は、なぜ起こるのか?
「あの人は優秀だ」と誰もが認めるような人が、入社後、会社からあまり評価されないケースがある。採用時と入社後の評価のズレは、なぜ起こるのか。理由を辿っていくと、社員マネジメントにおける日本企業の課題が浮かび上がる。