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三井住友銀行が「FA制度」導入 年間「5000件」を超える人事異動はどう変わる?プロ野球でおなじみ(3/3 ページ)

三井住友銀行は2026年1月から、FA制度を導入する。プロ野球でおなじみのFA制度、三井住友銀行はどのように運用するのか。

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「逃げの一手にしてはいけない」 頑張っている人が報われる仕組み作り

 年間約5000件の異動のうち、公募にチャレンジしているのは800〜1000件程度だという。その中で実際に異動が実現するのは現状3割程度で、北山氏は「非常に高い打率だ」と話す。

 今後、従業員がさまざまな仕事にチャレンジしやすい環境が整い、この数字はより高くなるかもしれない。その一方で、「希望の配属先ではなかった」「仕事があまり楽しくない」と配属後短期間で判断し、異動を繰り返す──といった、本来の目的とは異なる活用がある可能性もある。

 北山氏は公募やFA制度を、逃げの一手にしてはいけないと語る。

 「『この仕事はもう嫌だから他の仕事に変えよう』という逃げの一手にしてはいけないと考えています。自身で覚悟を持ってキャリアチェンジをしよう、しなければいけないと考える従業員の選択肢の一つがFA制度です。選択肢は、頑張っている人、頑張っていない人それぞれに同じ数提供されるべきではないと考えています。頑張っている人たちには会社として数多くの可能性を提供していきますが、そうでない人はキャリアの選択肢がどんどん狭まってしまうかもしれません」(北山氏)


三井住友銀行本社、筆者撮影

 とはいえ、突然「自律的に頑張れ」と言われても、戸惑ってしまう従業員もいるだろう。同行は従業員の自己選択をサポートするために、社内の仕事の情報を知ってもらう機会の創出に取り組む。

 転職サイトなど社外の仕事に関する情報を得られる機会は多い一方で、社内の仕事を細かく把握できる機会はまだ少ない。大きい会社であればあるほど社内にさまざまな仕事があるが、従業員にその仕事内容を伝えきれている会社は少ないのが現状だ。

 同行ではこれまで、社内の仕事を知る機会として、年に1度社内版のキャリアフォーラムを開催。毎年1500〜2000人程度の従業員が参加しているという。今後は社内の仕事について学べる機会を増やしていく方針だ。

 「次のステップとしては社内の仕事を一つ一つデータ化し、従業員が検索サイトなどで調べられる環境を作りたいです。従業員に社内で自律的なキャリア形成を実現してもらうために、強力なツールになるだけでなく、従業員の転職を防ぐクッションにもなると思っています」(木下氏)

「待ちの姿勢も自分で選んでほしい」

 2026年から導入する新しい人事制度やFA制度では、これまでと比較して「専門性」が評価されるようになる。一方、これまでと同様、さまざまな場所で多くの業務を経験し、総合職として活躍する、“伝統的な出世の道”も引き続き残っていく。総合職を目指す従業員への対応はどうしていくのか。

 「やりたいことが明確な人もいれば、活躍できる場所で働きたい、自分の適性に合った仕事が良いという考えを持つ方も多い。後者であれば、引き続き人事部がその方の能力や経験、これまでの評価、キャリア志向を踏まえて、異動を案内していきます」

 「私たちは従業員のキャリアにとって最適だと判断した異動を案内をしていくので、それを選ぶというのも、一つの選択肢として当然にリスペクトされる考え方。運用サイドにとっては、そういった従業員がいないと最適配置を実現することが難しくなっていくので、(FA制度や公募を活用しないことが)特にネガティブに働くことはありません」(鮫島氏)

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