「公益通報」と「ハラスメント」、企業は相談窓口を分けるべき 線引きの理由を解説(2/3 ページ)
兵庫県やフジテレビなどの問題を通じて、注目が集まる公益通報者保護制度。3月4日には、公益通報者保護法の一部を改正する法案が閣議決定され、1年半以内に施行されることになりました。法改正の概要やハラスメント対策との違いについて解説します。
法律を守らなかった事業者には刑事罰も
今回の改正案は、主に次のような内容です。
(1)公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実行性の向上
法律に違反した事業者(企業)に対しては、現行法の指導・助言に加え、刑事罰も課せられるようになります。
(2)公益通報者の範囲拡大
公益通報者の範囲に、事業者と業務委託関係にあるフリーランスおよび業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスを追加し、公益通報を理由とする業務委託契約の解除その他不利益な取り扱いを禁止します。
(3)公益通報を阻害する要因への対処
事業者が、労働者などに対し、正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めるなど公益通報を妨げる行為を禁止します。また事業者が、正当な理由なく、公益通報者を特定するのも禁止されます。
(4)公益通報を理由とする不利益な取り扱いの抑止・救済の強化
公益通報を理由として解雇又は懲戒をした者に対し、直罰(6カ月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金、両罰)を新設。法人に対しては、最大で3000万円の罰金が課されます。
改正された背景としては、公益通報保護制度に対する整備がされていない企業が多いことが主な理由です。制度は整えている企業でも通報者を特定するなど、法律の主旨に反する対応が見受けられました。また通報者の評価が下がったり、懲戒・解雇されたりするケースもありました。通報に対する報復を恐れて、不正が行われているのを知りつつも黙認した人もいるかもしれません。
こうした状況を改善するため、公益通報を理由とする不利益な取り扱いをした企業に対して、刑事罰や最大3000万円の罰金を支払わなければならないという重い刑罰が科されるようになったのです。ただし、違反しているからといっていきなり逮捕されるわけではありません。労働関連の取り締まりと同様に、基本的に指導・助言、勧告、さらに社名の公表をされても違反が是正されない段階になって行使されるものと思われます。
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