BYDの“軽”が日本に上陸 エコカー補助金の陰に潜む“監視リスク”:世界を読み解くニュース・サロン(1/3 ページ)
中国のEVメーカー、BYDが日本の軽自動車市場に参入すると発表した。中国製のEVを巡っては、欧米でセキュリティの懸念が指摘されている。多くの情報を収集するEVは、スパイ活動にも活用できると見られており、日本でも警戒が必要だ。
世界を読み解くニュース・サロン:
本連載は、国際情勢やビジネス動向を深掘り、グローバルな課題とそれが企業に与える影響を分析する。米中関係やテクノロジー業界の変動、地政学的リスクに焦点を当て、複雑な要素を多角的に捉えながら、現代社会の重要な問題を分析。読者にとって成功への洞察を提供していく。
日本の国会で最近、「エコカー補助金」が取り上げられ、SNSを中心に話題になっている。
4月23日の衆院内閣委員会で、経済産業省のエコカー補助金(正式には「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」)について質疑が行われ、中国メーカーの自動車にも補助金が出ることが議論になった。
EVの中国最大手メーカーである比亜迪(BYD)が2026年後半に、日本の軽自動車市場に参入すると報じられた。日本では新車販売の約4割を軽自動車が占める中で、安さを武器にするBYDの軽自動車が参入することで、国内メーカーは戦々恐々としているという。
ビジネスという意味では、競争があるほど自動車のクオリティが上がることが期待できるので健全だといえるが、中国の場合は中国国内でも政府からの補助金があるため、安価な価格設定ができると指摘されている。関税問題で話題の米ドナルド・トランプ政権も、この点に批判の矛先を向けている。
ただ、問題はそればかりではない。実は最近、英国の政府系機関である国防科学技術研究所(DSTL)が作成した、EVに関する報告書がセキュリティ関係者らの間で話題になっている。この報告書では、中国製のEVが国家の安全保障にとって危険であると警鐘を鳴らしている。
英国では最近、EVに絡む話題が続いている。例えば、2027年末までに政府車両4万台をEVに転換するという計画が発表されたばかりだ。政府が導入するEVに中国製が含まれることへの懸念も出ている。
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