BYDの“軽”が日本に上陸 エコカー補助金の陰に潜む“監視リスク”:世界を読み解くニュース・サロン(2/3 ページ)
中国のEVメーカー、BYDが日本の軽自動車市場に参入すると発表した。中国製のEVを巡っては、欧米でセキュリティの懸念が指摘されている。多くの情報を収集するEVは、スパイ活動にも活用できると見られており、日本でも警戒が必要だ。
EVは「移動するスパイ装置」
DSTLの報告書では、特に中国製のEVを名指ししている。EVは基本的にすべて「コネクテッド」(システムやネットワークに接続されている)であり、インターネットやWi-Fi、Bluetoothなどに接続されている。
要は、メーカーのサーバに接続されることで、所有者に関するあらゆる情報が、本人の自覚のないままに送信されることになる。個人情報や位置情報、会話、車体の内外の画像、生体情報、体調に関するデータまでもが収集される。今後さらに収集されるデータは増えるだろう。
ここで懸念されるのは、中国製EVは、中国製の通信ハードウェアや部品、数多くのカメラを搭載していることから、車自体が盗聴や情報収集に活用できてしまうことだ。車両が大量に情報を収集するため、欧米政府関係者の間では、EVは「移動するスパイ装置」とさえ呼ばれている。
この懸念は今に始まったことではない。英国防省は4月、中国製の部品で製造されたEVについて、情報収集に使用される懸念があるとして、特定の軍事施設およびその周辺への駐車を禁止した。
この措置は、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、米国、英国の情報共有プログラム「ファイブ・アイズ」による機密性の高い軍事訓練基地を対象としている。こうした施設はライバル国などのスパイ活動の標的となっている。すでに、該当するEVで通勤する職員は、施設から最大3キロ離れた場所に駐車するように指示されたと報じられている。
EVはもはや単なる移動のための「機械」ではなく、ワイヤレスネットワークを介してさまざまな形式のデータを常に通信する、相互接続されたスマートデバイスとなっている。先に述べた通り、車両の行動データなどの機密情報が常にサーバに送られ、通信機器を接続すれば車内の会話なども収集される。さまざまなデータが通信システムを介して送られるため、第三者に傍受される可能性もある。ハッキングの対象にもなるのだ。
英国のメディアにコメントを寄せた保守党の情報筋は「EVは基本的に移動式のスパイだ。EVから収集できるデータの量は並外れており、特に車内で行われた会話も狙われる」と述べている。
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