なぜ今、ホテル経営にAIが不可欠なのか “泊まる”を超える宿泊拠点の未来像(2/2 ページ)
テクノロジーと共創の力で“宿泊”の概念を再構築しようとする取り組みと、地域と連動して価値を創出する新たなまちづくりについて探る。
地域とともに育てる複合交流拠点施設
エスコンフィールドHOKKAIDOホテル 北広島駅前は、日本エスコンが手掛ける複合交流拠点施設の中核を担う施設として、地域と共に成長していくことを目指している。
ホテルが入る13階建ての施設は、4階以上がホテル、1〜3階には地域密着型ショッピングセンター「tonarie(トナリエ)北広島」が展開されており、JR北広島駅と歩行者デッキで直結。道産の食材を楽しめる飲食店や、北海道日本ハムファイターズと連動した空間演出が施されるなど、地域住民から観光客まで幅広い層に親しまれる施設となっている。
「トナリエ」ブランドは、“まちに寄り添いながら、まちと発展していく。いつもあなたの暮らしのとなりへ。”というコンセプトのもと、全国で展開されており、今回が11施設目となる。日本エスコングループがこれまでに培ってきた商業施設の開発・運営ノウハウを生かし、地域のコミュニティづくりや、まちの活性化への貢献を目指している。
日本エスコン上席執行役員の加藤氏は、ホテルを含むこの複合交流拠点施設について「地域とともに育てていく場」として位置づけ、次のように語る。
「オープニング・セレモニーでは、地元の中学生や高校生の吹奏楽部に演奏してもらいました。今後も発表会やミニコンサートなど、地元の学生さんたちにどんどん使ってもらいたいと思っています。ホテルは開業された時点で完成された施設とは捉えておらず、お客さまの声をもとに改善を重ね、満足いただける施設に成長させていきたいです」(加藤氏)
「地元の行政の方々との連携は非常に密に取らせていただいています。また、地元のお店にテナントとして入っていただいたり、地域の商店の方とイベントを一緒に企画したりするなど、地域住民、行政、事業者の三者で地域を盛り上げていくことが重要だと考えています」(加藤氏)
同施設の2階の「キタヒロ・フードホール横丁」や3階の「テラスアベニュー」などの共用空間は、地域連携の舞台としても活用が期待されている。地域に根ざし、地域と共につくる商業施設とホテル。その複合的な魅力が、北広島市の新たな顔となりつつある。
元日ハム・杉谷拳士氏が描く可能性 地域と未来をつなぐ架け橋に
地域との橋渡し役として、SQUEEZEの取り組みに加わっているのが、元北海道日本ハムファイターズの選手でZENSHIN CONNECT代表の杉谷拳士氏だ。SQUEEZEのアンバサダーとして活動する杉谷氏は、自身が率いるZENSHIN CONNECTとのパートナーシップを通じて、スポーツと宿泊、そして地域をつなぐ共創の推進力となっている。
杉谷氏は「地域や北海道のみなさんと一緒になって、地域の子どもたちに北海道をより一層好きになってもえるようなイベントやトークショーなどを企画できればと思っています。選手の時に、人とのつながりに支えられてここまで来ることができました。その“人とのつながり”と“未来への挑戦”をキーワードに、子どもたちと一緒に未来へつなげていくことが、僕の使命なのかなと思っています」と自身の思いを語る。
北海道には、野球やサッカー、バスケットボール、バレーボール、ゴルフ、ウインタースポーツなど年間を通して楽しめるコンテンツがあることにも触れて杉谷氏は「北広島市を拠点に、札幌市にも行くことができて、新千歳空港からも近い。そうした地域の特性を生かしながら、あらゆるスポーツとSQUEEZEさんの取り組みを掛け合わせて、さまざまな可能性が広がっていくと思います」と、地域活性化の可能性に期待を寄せている。
滞在がまちをつなぐ 人と地域が交わる場づくり
ただ「泊まる」だけでは終わらない。エスコンフィールドHOKKAIDOホテル 北広島駅前は、DXによって業務の最適化を図るだけでなく、観光・ビジネス・地域住民の交流が自然に生まれる都市空間として、宿泊体験そのものを拡張しようとしている。
AIを活用した宿泊需要予測によるレベニュー・マネジメントの高度化や人員配置の最適化など、ホテル運営の中枢を担うsuitebookは、単なる効率化ではなく、地域と人がつながる余白を生み出すためのインフラだ。
今回のJR北広島駅前の再開発の事例は、「まち」と「ひと」の関係性を深く構築する複合施設の在り方を提示している。地域への滞在が人の流れを生み、まちへの愛着や再訪の循環を生み出していく。その連鎖が、新たなまちの価値を創出していくのだ。
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