どうして日本人は“箱型”が好きなのか ミニバンが売れ続ける日本市場の特異性:『自動車ビジネス』(2/3 ページ)
日本でミニバンが人気を集める理由とその歴史的背景を探る。1960年代のセダン全盛時代から、1990年代のミニバン登場、2020年代の高級車化まで、クルマ選びの価値観がどのように変化したのか。
1970年代になると、後ろにトランクのないハッチバック車が人気となります。名前を挙げればトヨタ「スターレット」やホンダの「シビック」、三菱の「ミラージュ」です。マツダのハッチバック「ファミリア」は1980年代に大ヒット車となっています。
1980年代になると、さらに幅広い車型が人気となります。かっこいいクーペでデートのために使われる「スペシャリティ」に注目が集まり、ホンダ「プレリュード」や、日産「シルビア」、トヨタ「セリカ」が若者たちに人気となりました。
また、80年代にはアウトドアにクルマで遊びにいくというRVブームが生まれます。クロスカントリー車(いまで言うSUV)や、ステーションワゴンの人気が急上昇します。人気となったのが三菱「パジェロ」やトヨタ「ハイラックス」、日産「テラノ」でした。
この流れの延長で、1990年代になるとトヨタ「RAV4」や「ハリアー」、ホンダ「CR-V」がデビューします。クロカンではなく、街乗りメインの正真正銘のSUVの誕生です。
同じ1990年代には、トヨタの「エスティマ」、日産「セレナ」、ホンダの「ステップワゴン」がデビューします。商用車ベースではない、乗用を主眼として生まれた、いまのミニバンの開拓者となります。
ただし、これらSUVやミニバンの先駆者は、大ヒットしたわけではありません。あくまでも、昭和から平成初期の不動のベストセラーはトヨタの「カローラ」です。「カローラ」は、1969年から2001年まで、33年間連続の国内販売台数1位の座を守り続けていた絶対王者だったのです。
ただし、「カローラ」の1位には、特別な理由があります。それは派生モデルがたくさんあったということ。「カローラ」は、セダン、クーペ、ハッチバック、商用バン、ステーションワゴンと5つもの車型を持っていました。言い方を変えると当時は、「カローラ」にある5つの車型が売れ筋だったのです。
しかし、2002年に「カローラ」が1位の座を追われた後、日本の市場は大きく変化します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
名刺の裏に金額を書いて「せーの」で出してきた クルマ買い取りの“入札制度”が面白い
中古車市場は、業者オークションの台頭と買い取り専門店の増加で大きく変化した。今、買い取り業者はどのようにクルマを査定して買い取っているのか。筆者が一括査定を申し込んでみたところ……
なぜヘッドライトがまぶしく感じるクルマが増えているのか
夜間、クルマを走らせていて、対向車や後続車のヘッドライトがまぶしく感じることがある。その原因はどこにあるのか。大きくわけて3つあって……。
なぜ人は「激安タイヤ」を買うのか アジアンタイヤの存在感が高まるリスク
アジアンタイヤが日本で存在感を増している。大きな理由として「安い」ことが挙げられる。しかし、本当にそれでいいのかというと……。
なぜ「プリウス」が標的にされるのか 不名誉な呼び名が浸透している背景
トヨタのプリウスをネットで検索すると、批判的なコメントが多い。ドライブレコーダーの交通事故や暴走ドライバーの動画を目にすることが多いが、なぜプリウスは標的にされるのか。背景を探っていくと……。
なぜ「時速5キロの乗り物」をつくったのか 動かしてみて、分かってきたこと
時速5キロで走行する乗り物「iino(イイノ)」をご存じだろうか。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」が開発したところ、全国各地を「のろのろ」と動いているのだ。2月、神戸市の三宮で実証実験を行ったところ、どんなことが分かってきたのだろうか。

