日本の“人気車”はなぜこんなにも変わる? 欧米と真逆の市場構造:『自動車ビジネス』(1/3 ページ)
日本では流行に応じて車の人気が移り変わるが、欧米では同じ車種が長く愛される傾向がある。街づくりや生活様式の違いが、自動車文化の差異を生み出しているようだ。
この記事は『自動車ビジネス』(鈴木ケンイチ/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
日本は1960年代に庶民にクルマが普及するモータリゼーションが訪れました。それから現在まで約60年の月日が流れています。しかし、欧米の自動車の歴史は、日本よりも、はるかに長いものです。歴史に名高い、フォードの「モデルT(いわゆるT型フォード)」が、米国で大ヒットしたのは100年も前のこと。欧州では、メルセデス・ベンツやプジョー、ルノー、フィアットなどが、それよりも前からクルマを生産していました。
欧米は、日本に倍する自動車の歴史を持っているのです。
また、日本は昔から、ひとつのものが大きく流行りやすい国と言えるでしょう。クルマに関しても、新しいモノが大ヒットしやすく、さまざまなブームが生まれています。
それに対して、欧米は、かなり保守的で、同じようなクルマが、長いあいだ売れ続けています。例えば、米国で言えば、最も数多く売れるクルマは、過去数十年にわたって変化はありません。それは、フルサイズピックアップと呼ばれるクルマであり、フォードのFシリーズとなります。なんと、Fシリーズは、40年以上にわたって、米国のベストセラーカーの座を守り続けているのです。
また、SUVの人気も高く、3列シートのSUVは子育て世代やファミリー層御用達のモデルとなっています。そのため米国市場において、SUVとピックアップトラックなどを含んだ小型トラックのシェアは非常に高く、全体の8割近くを占めています。ある意味、ここまでトラック系のシェアの高い先進国は他にありません。
ちなみに米国における日本メーカーのシェアも、非常に高いものとなっています。2023年の実績で言えば、シェアナンバー1こそGM(16.5%)となりますが、それに続く2位がトヨタ(14.4%)で、3位フォード(12.7%)、4位ステランティス(9.8%)、5位ホンダ(8.4%)、6位日産(5.8%)となります。GM、フォード、クライスラー(現・ステランティス)という元ビッグ3に、トヨタが割って入り、それにホンダと日産が続いているのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
名刺の裏に金額を書いて「せーの」で出してきた クルマ買い取りの“入札制度”が面白い
中古車市場は、業者オークションの台頭と買い取り専門店の増加で大きく変化した。今、買い取り業者はどのようにクルマを査定して買い取っているのか。筆者が一括査定を申し込んでみたところ……
なぜヘッドライトがまぶしく感じるクルマが増えているのか
夜間、クルマを走らせていて、対向車や後続車のヘッドライトがまぶしく感じることがある。その原因はどこにあるのか。大きくわけて3つあって……。
なぜ人は「激安タイヤ」を買うのか アジアンタイヤの存在感が高まるリスク
アジアンタイヤが日本で存在感を増している。大きな理由として「安い」ことが挙げられる。しかし、本当にそれでいいのかというと……。
なぜ「プリウス」が標的にされるのか 不名誉な呼び名が浸透している背景
トヨタのプリウスをネットで検索すると、批判的なコメントが多い。ドライブレコーダーの交通事故や暴走ドライバーの動画を目にすることが多いが、なぜプリウスは標的にされるのか。背景を探っていくと……。
なぜ「時速5キロの乗り物」をつくったのか 動かしてみて、分かってきたこと
時速5キロで走行する乗り物「iino(イイノ)」をご存じだろうか。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」が開発したところ、全国各地を「のろのろ」と動いているのだ。2月、神戸市の三宮で実証実験を行ったところ、どんなことが分かってきたのだろうか。

