なぜ“怪しい”のに売れている? リカバリーウェアという不思議なヒット商品:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
リカバリーウェアが売れている。本当に効果があるのかビミョーなところだが、それでもヒットし続けるワケとは――。
老人国家ニッポンにピッタリのビジネスモデル
つまり、冒頭で紹介した情報番組のように「リカバリーウェアってすごいんですよ」「いやー、効果が実感できます」とコメンテーターたちが喧伝(けんでん)すればするほど、高齢者たちがリカバリーウェアを買い求めて、「効果」を体感するというワケだ。
高齢者になれば分かるが、人間は歳をとるほど不眠に悩まされる。日本の高齢者の3割が不眠に悩んでいるという調査もある。そこに加えて、高齢者は「うつ病」が多く、認知症に次いで多い有病率だとのデータもある。不眠や腰痛・神経痛がうつ状態を引き起こすケースもある。
このような症状に悩む高齢者を「睡眠剤」や「抗うつ剤」だけで救おうとすれば当然、健康被害も増えるし、137兆円まで膨張した社会保障給付費がさらに膨れ上がってしまう。
そこで「リカバリーウェア」の出番となる。
「ほら、この前、テレビでやっていたやつ。着るだけでよく眠れるんですってよ」
「3丁目の田中さんがリカバリーウェア着た途端、腰痛が治ってまたゲートボールをやれるようになったって」
日本マクドナルドの創業者・藤田田氏は「怪しげなものは商品になる」という言葉を遺した。人は正体が分かりきっていて、自分の想像通りのものよりも、「本当かな?」「インチキ臭くねえ?」なんて商品に好奇心をかきたれられてしまい、一度ハマると、その魅力からなかなか抜けきれないものだ。
“ちょっと怪しい”リカバリーウェアが、日本中のシニアたちの定番アイテムになる日も近いのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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